世界各国でISSB基準の導入検討が進む。日本では2025年度から利用可能か。

(文責:坂野 佑馬)

 2024年2月22日、米・ニューヨークにて開催された「IFRS Sustainability Symposium 2024」にて50を超える国・地域から約1,000社の企業、投資家、規制当局、その他の主要な利害関係者が集まり、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)基準のグローバルな導入について意見交換が行われた。
 各国間で比較可能な且つ一貫性のあるサステナビリティ基準の導入が切望される中、同シンポジウムにおいてIFRS財団(国際会計基準の策定を担う民間の非営利組織)は各国におけるISSB基準採用のためのガイドライン草案(The jurisdictional journey towards globally comparable information for capital markets:Preview of the Inaugural Jurisdictional Guide for the adoption or other use of ISSB Standards)※1発表した。同草案は、各国・法域におけるISSB基準の採用アプローチの特徴を示すことで、資本市場、規制当局、その他の利害関係者を支援することを目的としている。
 2021年にスコットランドで開催されたCOP26において、ISSBはサステナビリティ情報開示の世界的基準の確立を目的に設立され、2023年6月26日に最初の基準となる「IFRS S1号;一般サステナビリティ開示事項」及び「IFRS S2号;気候関連開示事項」を発表した。2023年末のCOP28においては、64の国・地域から390以上の組織が、ISSB基準の利用をグローバルレベルで推進することを表明している。※2ASEAN、ブラジル、ブルネイ、カナダ、欧州連合(EU)、ドイツ、ガーナ、香港、日本、ケニア、モーリシャス、メキシコ、ミャンマー、ナイジェリア、フィリピン、シンガポール、トルコ、英国、ウルグアイ、ベトナムの規制当局も賛同を表明しており、日本からはSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan;サステナビリティ基準委員会)※3が名を連ねている。

 本稿では国内へのISSB基準導入の検討が先行している3か国の事例を紹介する。

1.オーストラリア

 2023年10月に、オーストラリア会計基準審議会(AASB)はISSB基準をベースとした新たな基準案を公表した。新基準案は、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)に監査済みの年次財務報告書を提出する必要がある全ての上場企業と、特定の規模基準を満たす大規模な非上場企業に適用される。まず、従業員500人以上、売上高5億ドル(約733億円)以上、資産10億ドル以上の企業、および資産50億ドル以上の資産所有企業に適用され、2024年7月1日から始まる会計年度から報告が開始される。中堅企業(従業員数250人以上、売上高2億ドル以上、資産5億ドル以上)は2026年7月以降の会計年度から、中小企業(従業員数100人以上、売上高5,000万ドル以上、資産2,500万ドル以上)は2027年から報告が義務付けられる。

2.マレーシア

 2023年5月24日、マレーシア証券委員会はマレーシア版ISSB基準の開発に向けてサステナビリティ情報開示諮問委員会(ACSR)を設置した。ACSRは、2024年2月15日よりマレーシア版基準案についてのコンサルテーションペーパーを公表し※4、協議を始めている。マレーシア版基準案によると、マレーシア版ISSB基準はマレーシア証券取引所のMain Market(全980銘柄)上場の発行体に強制適用し、成長市場の発行体である(ACE Market:全218銘柄)や大規模な非上場企業にも報告要件を拡大する可能性のある、アプローチを概説している。また、2025年から2028年にかけては救済措置付きのISSB基準を採用し、その後2027年から2029年にかけて通常のISSB基準を採用する段階的な適用を検討している。

3.ナイジェリア

 2024年2月3日、ナイジェリア財務報告審議会(FRC)は、ナイジェリアにおけるISSB基準の導入に向けたロードマップ報告書(DRAFT)を公表した。※5同ロードマップによると、段階的に同基準の適用範囲を拡大していくことが計画されている。フェーズ1として、ナイジェリア市場に上場している全ての上場企業及び、規制対象の非上場企業、公開有限会社は、2027年1月1日以降に開始する会計年度から情報開示が義務付けられる。また、非上場企業の中でも従業員数や事業セクター等の条件に適合する企業に関しては、2028年1月1日以降に開始する会計年度から情報開示が義務付けられる。中小企業に関しても、2030年以降の会計年度について情報開示が義務付けられることとなっており、政府及び公共機関に関しても2031年会計年度からの報告が求められることとなる。

 さて、最後に日本国内の進捗についても紹介しよう。2022年に設立されたSSBJが上記の国々と同様に国内のサステナビリティ基準開発を推進している。SSBJによって推進されている「日本版S1プロジェクト」及び「日本版S2プロジェクト」は、HP上で公開されている「現在開発中のサステナビリティ開示基準に関する今後の計画(2023年12月25日公表)」によると、遅くとも2024年3月31日までに草案の公開を、2025年3月31日までに基準の確定を発表することを目標に設定している。※6
 一方で、日本版ISSB基準の、国内企業への適用時期に関する議論は継続中である。同基準の適用時期は、2024年2月19日に開催された第31回サステナビリティ基準委員会で審議がされている。具体的には「①強制適用時期は定めない。」、「②確定基準公表日以後終了する年次報告期間に係るサステナビリティ関連財務開示から適用することを認める。」という2つの方向性が提案されている。※7
 以上を踏まえると、3月締めの企業であれば2025年の会計年度(報告は2026年となる)から日本版ISSB基準を利用可能となる。今のところ、日本版ISSB基準に基づいた企業における情報開示の義務化は検討されていないとのことであるが、プライム市場上場企業を始めとした、グローバル企業は率先して対応を進めていくであろう。国内におけるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の展開と同様もしくはそれ以上のスピードで普及が加速していくと考えられる。中小企業においても自分事として能動的に情報を獲得するように努めてもらいたい。弊社としても逐次情報を共有させていただく。

引用

※1 chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.ifrs.org/content/dam/ifrs/supporting-implementation/adoption-guide/preview-of-the-jurisdictional-adoption-guide.pdf

※2 https://www.ifrs.org/news-and-events/news/2023/12/issb-at-cop28-statement-of-support/

※3 https://www.asb.or.jp/jp/fasf-asbj/list-ssbj_2.html

※4 https://www.sc.com.my/resources/media/media-release/acsr-invites-public-feedback-on-proposed-use-of-issb-standards-in-malaysia

※5 https://frcnigeria.gov.ng/2024/02/03/request-for-comments-on-draft-roadmap-report-for-adoption-of-ifrs-sustainability-disclosure-standards-in-nigeria/#comments

※6 https://www.asb.or.jp/jp/project/plan-ssbj.html

※7 chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20240219_05.pdf