ドロップイン燃料のHVOが4月からドイツ全土で販売

(文責:青野 雅和)

ドイツは世界最大のバイオ燃料生産国の一つである。「石油・タンパク質プラント促進連合(UFOP)」によれば、ドイツは約933,117トンのバイオディーゼルを輸出し、バイオディーゼルの主な消費者は、オランダ、ポーランド、ベルギーを筆頭とする EU 諸国 (88%) であった。バイオ燃料はFAMEとHVOであり、ドイツはHVO に最も熱心に取り組んでいる国の 1 つといえるかもしれない。

 さて、ドイツでHVO100(HVO100%)がガソリンスタンドで販売されることとなった。早ければ4月13日からガソリンスタンドで購入可能になる。尚、HVOだけではなく、B10と呼ばれる体積比率で10%のバイオディーゼルが化石由来の既存のディーゼル燃料にブレンドされたものも販売される。ドイツでは、これまではB7(7%ブレンド)が販売されていた。なお、HVOはドイツにおける燃料規格のDIN EN 15940規格に準拠されており、ガソリンスタンドでは「X To Liquid」の略語としてXTLとして表示され販売される。また、販売される対象車両はドイツ自動車協会(VDA:Verband der Automobileindustrie e.V.)の許可を得た車両のみ利用可となっている。

 欧州においてはいくつかの地域で既にHVOが販売されている。スウェーデンでは、HVO100 がドイツと同様にXTLと表示され従来のディーゼルの代替品として多くの給油所で利用可能であり、スイスではHVO100 と表示されガソリンスタンドで販売されている。その他オランダ、イタリア、オーストリアなど2,250以上のガソリンスタンドで販売されている。

図1. ガソリンスタンドでのHVO販売の表示形式

出典:toolfuel社

図2. VW社の新型バン:グランドカルフォルニアのガソリンキャップにおけるXTLの表示

出所:https://www.grandcali.com/en/new-diesel-fuels-from-april-2024/#google_vignette

 日本では、ディーゼル自動車向けにHVOを販売しているガソリンスタンドは無いが、SAFの製造プロセスで製造されるこの燃料は、工場のディーゼルボイラー、コージェネレーション、船舶燃料などディーゼル燃料の代替として、しかもエンジンの改造は必要無いことからドロップイン燃料として注目されている。CO2削減量は既存の化石由来のディーゼル燃料の90%減であり、しかも第一世代のバイオ燃料であるFAMEよりもセタン価が高いことからノッキングが少なく、曇点が‐25℃と寒冷地域に適しており、NOx値もFAMEよりも低いなど利点が多い。
 日本では廃油を集めSAF製造に利用するプロモーションを東京都が行っているが、前述したように多くのモビリティで利用できるHVOは今後注目を浴びる燃料となっていくであろう。