ドイツでは海底下へのCO2貯留が進むのであろうか。2023年に炭素管理戦略を策定予定

(文責:青野 雅和)

 ドイツでは、法律が整備されることを見越して、大型プロジェクトが締結されている事例が見受けられる。本稿ではCO2貯留に関する状況をご報告する。

■2012年にCO2貯留法を発効

 ドイツでは遡る事2012年8月にドイツ連邦経済・気候変動省 (BMWK)がCO2貯留法(Carbon Capture and Storage Act :KSpG)を発効し、CO2貯留のテストを開始していた経緯がある。同法は実証及び利用に関する法案であり、4年毎に評価報告の義務がある。
 直近では、2022年12月の評価報告書において、「気候目標を達成するために CCS と CCU を導入する必要性」が認められた。また、CO2を回収、輸送、貯蔵する技術はすでに成熟しており、テストされていることが認識されたとも報告している。
 一方で、ドイツの法的枠組みは現在、特にグリッドベースのCO2輸送に関して、これらの技術の導入の妨げとなっており、評価報告書では、CO2の輸送とそのために必要なインフラの構築を可能にする法的枠組みの対応変更するための初期の勧告を行っている。[i]
 この報告書に基づいてBMWKは2023年に炭素管理戦略を策定する予定である。連邦政府は電化、エネルギー効率の向上、グリーン水素への移行を最優先にしていることから本戦略を重要視している。ドイツでCO2を貯蔵するかどうかという問題に答えるのも、炭素管理戦略にかかっているとのこと。

■CO2貯留プロジェクト:ノルウェーのEquinorとドイツのWintershall Dea

 ノルウェーの石油・ガス大手Equinorとドイツ最大の原油および天然ガスの生産者のWintershall Deaとの提携には、2032年までにドイツ北部の二酸化炭素回収施設とノルウェーの貯蔵施設を結ぶ900キロメートル(560マイル)のパイプラインを建設することが含まれている。[ii]
 然しながら問題もある。ドイツは海底下へのCO2貯留の国際的枠組み(条約)であるロンドン議定書の改正第6条を批准していないことから、ドイツ国外の海底下のCO2貯留サイトへの二酸化炭素の輸送は禁止されている。

 ドイツでのCO2吸収や移送、貯留に関しては、弊社NewsのCO2パイプラインの紹介(2023年6月23日)[iii]にもあるように、ドイツ全土にCO2パイプラインを敷設し、オーストリアやベルギーに敷設されたCO2パイプラインに繋ぐインターナショナルな展開となっている。こうした計画も北海でのCO2貯留に繋がることとなり、ドイツ政府の脱炭素化のオプションとしてCCSをどう扱っていくのか、法制度の行方を注視していきたい。

引用

[i] https://www.bmwk.de/Redaktion/EN/Pressemitteilungen/2022/12/20221221-federal-cabinet-adopts-evaluation-report-on-the-carbon-dioxide-storage-act.html

[ii] https://energy.economictimes.indiatimes.com/news/oil-and-gas/norwegian-german-firms-team-up-for-co2-capture-project/93897477

[iii] https://baumconsult.co.jp/2023/06/23/%e3%83%90%e3%82%a4%e3%82%a8%e3%83%ab%e3%83%b3%e5%b7%9e%e3%81%ae%e6%96%b0%e8%a6%8fco2%e3%83%91%e3%82%a4%e3%83%97%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%b3%e8%a8%88%e7%94%bb%e3%81%a7%e3%83%89%e3%82%a4%e3%83%84/