日本におけるグリーンアンモニア普及の視点は地産地消
~消漏洩リスク対策コストに対してトレードオフとなるメリットの追求がポイントか~

(文責:青野 雅和)

 先だって、弊社のNEWSの場を借りて、アンモニアに関して触れて来たが、本稿においてもグリーンアンモニアを再度とりあげ、需要に関して検討してみたい。

 アンモニアの製造には水素が必要であるが、大手のアンモニア製造企業は、天然ガスを中心とした化石燃料から水素を脱水し、窒素を加えた反応で生成している。ここで注目すべきは天然ガスの価格動向である。
 欧州では欧州委員会が天然ガスの価格上限設定を1年延長することが12月19日に合意された。ノルウェーのガス田修復にメドが立っていることと、冬季が比較的緩やかであることによる価格が安定傾向にあるものの、将来のエネルギー価格の高騰に対する安全策を鑑みて2025年1月末までの適用となる。
 従い、欧州では、天然ガスの価格上昇懸念を考慮している考察される。

 一方でアンモニアの価格であるが、2023年第二四半期に下落傾向を示しており、原油価格・天然ガス・石炭の下落傾向と窒素肥料業界からの調達注文が低迷していることを受け、2023年6月終了四半期時点では下落傾向とみられる。

 ということは、現状の化石燃料由来のアンモニアに関しては、価格の横ばいもしくは下落が続くことが示されている。では、グリーンアンモニアの需要はどのように励起されるのであろうか。読者の皆様には釈迦に説法であり、申し訳ないが、以下の点が考察される。

①世界における地政学リスク等により天然ガスを含む化石燃料の価格が上昇する。

②肥料の需要が増大する。

③気候変動対策、特にCBAMによるアンモニアに対する炭素価格の上昇
(欧州のグリーンアンモニアにおけるCFPとの比較)

 上記の①と②に関してはウクライナへのロシア侵攻による世界的なエネルギー価格の上昇を受けたこともあることから、今後の紛争リスク等の予期できない事象が影響する。一方で③は既に公表されている事実であり、アンモニアの炭素価格の上昇は予期できるのではなかろうか。その意味で、グリーンアンモニアは石炭由来のアンモニアの市場価格に対抗できる価格メリットを考慮した形で推進が必要と考える。では、それはどのように考えるべきであろうか。

 日本ではアンモニアの8割が尿素、硝酸アンモニア、リン酸アンモニア、硫酸アンモニア等の化学肥料としての原料として使用され、工業利用は2割ほど。また消費量の8割を国内製造品で消費しており、2割を輸入で賄っている。輸入量の8割をインドネシア、2割をマレーシアから調達している。ということは、日本、インドネシア、マレーシアの3か国のアンモニア製造企業が脱炭素化に対応していくか否かが日本におけるグリーンアンモニアの競争力の源泉となる。農業における肥料の地産地消の考えが浸透していくことがグリーンアンモニア市場の拡大理由となろう。
 ちなみに燃料利用は火力発電への混焼も検討しているが、資源エネルギー庁[ⅰ]によれば、日本の火力発電全てに20%混焼したとすると、世界の輸出入量の2000万トンを必要とするとされグリーンアンモニアを同量程度生産することは現状難しいと言わざるを得ない。

 もう一つの考えとしては、アンモニアの漏洩リスクへの対応によるメリットをコストとして吸収できるかであろう。アンモニアは毒性が強く、輸送や利用時の漏洩による事故がリスクとして想定される。漏洩事故は死亡事故にも繋がることから、アンモニアに関してはリスクを減じることが肝となる。また、前述した肥料利用を想定すれば、グリーンアンモニアの製造と尿素、硝酸アンモニア、リン酸アンモニア、硫酸アンモニアの製造プラントを併設できるオンサイトでの製造も考えられる。米国では農場でのオンサイトアンモニア製造が検討されているが、日本ではどうであろうか。日本では農業を株式会社化し展開している企業も増えてきた。工場でのオンサイト生産の検討を進めている事例もある。ニッチであるが効率的に利用でき脱炭素化が進めばそれで良い。

[ⅰ]

https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/html/3-8-4.html