欧州の空港ではSAFは航空機、HVOは特殊車両で脱炭素化へ

(文責:青野 雅和)

 日本における航空分野の脱炭素化に向けては、2021年10月の第6次エネルギー基本計画における航空分野において「①機材・装備品等への新技術導入、②管制の高度化による運航方式の改善、③SAFの導入促進、④空港施設・空港車両のCO2排出削減等の取組を推進するとともに、空港を再生可能エネルギー拠点化する方策を検討・始動し、官民連携の取組を推進する」ことが位置付けられた。[i]
 空港における脱炭素化においては、飛行機で利用されるジェット燃料にSAFを混合して利用することが推進され、航空燃料の動向が各種記事等でも取り上げられているが、日本では空港のモビリティの脱炭素化については、一部の空港でトーイングカー(航空機や重量物の牽引)等の特殊車両がディーゼル燃料利用からEV化やFCV化への移行を進めている。こうした展開の中、本稿では、空港でのHVO(Hydrotreated vegetable oil)利用に焦点を当て紹介したい。

1.イタリア:レオナルド ダ ヴィンチ フィウミチーノ空港

 同空港の運営を行っているAeroporti di Roma (ADR)社の空港車両にHVOが利用される。HVOはベネチアのマルゲーラ(Marghera)の工業地帯にあるEniのヴェネチアバイオ精製所にて製造され、レオナルド ダ ヴィンチ フィウミチーノ空港には5,000リットルをデリバリーしている[i]。同空港へのSAF供給もEniより供給されており、UCO(Used Cooking Oil)由来で製造されている。同空港はACI Europe から空港向けの唯一の機関として承認されている世界的な炭素管理認証プログラムAirport Carbon Accreditation[ii] においては4+ "Transition" 認定(最高はレベル5:世界で10空港のみ)を受けており、2030年までには温室効果ガス排出量を実質ゼロに削減の目標を掲げている。因みに日本で4+ "Transition" 認定の空港は存在せず、最高位は4 "Transformation" 認定であり、中部国際空港、関西国際空港、大阪国際空港(伊丹)、神戸空港の4つの空港である。

2.フランス:カンヌ・マンドリュー空港とゴルフ・ド・サントロペ空港

 両空港ではグランドハンドリング業務の脱炭素化を推進しており、その一環として車両の電動化を進めている。しかしながら完全電動化が難しく、電動化が困難なディーゼル機関駆動の車両ではHVO100(HVO100%の燃料)を利用することを決定した。カンヌ・マンドリュー空港では、消防車、給油トラック、航空機向け補助電源装置が対象となっている。[i]
 同空港のHVOはEN15940規格を満たしたものであり、UCO、動物性脂肪、紙パルプの副産物などの廃棄物を原料としている。同空港では20,000 リットルのディーゼル燃料からHVOに変換される。ライフサイクル全体で少なくとも 80% の CO2 が節約されるとのこと。
 ゴルフ・ド・サントロペ空港でも4,000 リットルのディーゼル燃料からHVOに変換される。因みに両空港ではAirport Carbon Accreditation[ii] においては4+ "Transition" 認定を受けている。

3.アイルランド:ダブリン空港

 同空港運営会社のdaa[i] では空港車両の46% に相当する合計 101 台の車両へHVOを供給する。これにより年間 400 トンの二酸化炭素排出量が削減され、二酸化炭素排出量90% が削減されることとなる。
 HVOは物流会社のExolumから供給されるとのこと。HVO への切り替えは、既存のすべてのディーゼルタンクとエンジンを使用できるため、追加のインフラ投資を必要とせず、他の多くの利点をもたらす。また、HVO は、-30℃で機能することが証明されおり、冬の間はより信頼性が高くなると評価されている。
 同空港は2050年までにネットゼロカーボンビジネスを目指すとのこと。

4.ドイツ:ケルン・ボン空港

 同空港では、ディーゼル駆動の消防車や大型の地上車両を Neste社のHVO100である MY Renewable Diesel™ で稼働するように切り替えた。既にNeste社のSAFは供給を受けている。

5.オランダ:スキポール空港

 同空港の運営者であるKLM イクイップメント サービス (KES)の空港車両でHVO100 を利用している。ネステがHVO100 の供給者である。同空港で車両の電動化を進めているが、特殊大型車両ではバッテーリーの大型化が困難な為、これら車両にHVO100の利用を行うとのこと。

 欧州の動きはSAFの製造過程の蒸留で製造されるHVOを代替燃料としてディーゼル燃料駆動車両に対し、利用を開始している。SAF利用は航空機燃料の利用を義務づけらていることが既に認識されているが、HVOを含むバイオディーゼルはREDⅢにおける対象燃料して欧州は利用を促進している。日本でもSAF利用が進む中、空港の業務向け特殊車両を中心に電動化できない車両へのHVO利用は間違いなく推進されていくであろう。

引用

[i] 空港の脱炭素化に向けた取組方針 令和4年2月  国土交通省 航空局chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mlit.go.jp/koku/content/001470045.pdf

[i] https://www.eni.com/en-IT/media/press-release/2022/01/eni-biofuel-to-power-aeroporti-roma-vehicles.html

[ii] https://www.airportcarbonaccreditation.org/

[i] https://en.cannes.aeroport.fr/news/cannes-mandelieu-and-golfe-de-saint-tropez-airports-are-abandoning-diesel-and-reducing-their-emissions-by-more-than-50-tonnes-of-co2-per-year

[ii] https://www.airportcarbonaccreditation.org/

[i] https://www.dublinairport.com/latest-news/2023/07/11/dublin-airport-cuts-vehicle-emissions-by-90-after-swapping-diesel-for-vegetable-oil