英国における新規販売のボイラーは26年にも水素対応ボイラーに移行か?

(文責:青野 雅和)

 現状利用しているガスボイラーを禁止することは無いが、英国政府では2026年から販売される家庭向けの全ての新しいガスボイラーを「水素対応」にする提案を12月12日に開始した。
 提案に関する公開協議は2023年3月21日まで行われ、その後、回答が分析され、2023年に回答を提供する予定とのこと。

■水素導入のタイムスケジュール
 英国政府は、将来的には家庭向けの暖房器具に利用している天然ガスを水素ガスに置き換えることを計画しており、正確なタイムスケジュールは不明であるものの、3つのステージで推進されると予測されている。複数のボイラーメーカーや関連機関で紹介されているので、その点を以下に整理する。

(1)2025年迄:ステージ1

 新規導入ボイラーの、水素対応規格に合わせた製造が開始され、国内での実証実験が完了する。現状は天然ガスボイラーでも良いが、水素での対応を可能とすることが要求される。

(2)2026年以降:ステージ 2

 20%の水素をブレンドした天然ガスとの混合ガスが供給される。前述混合ガスの供給は、2028年まで開始されないとの予想もある。

(3)2040年代:ステージ3

 ガス供給が 天然ガスから水素に100%切り替わり、英国で販売される新しいボイラーはすべて水素ボイラーとなる。

■対応メーカーと価格帯
 British Gas のホームページを参照すると、同社が販売するすべての新しいボイラーを含むほとんどのボイラーは、この水素混合物を問題なく使用できるとの表記が見て取れる。実際、多くのボイラーは、英国政府の水素移行に先立って、すでに「水素混合対応」とラベル付けされている。
 現在、ボイラー メーカーは新しい「水素対応」基準に取り組んでおり、英国が将来的に 100% 水素にできるだけ簡単に切り替えることができることを意味している。重要なことは、英国では「水素混合対応」ボイラーが既にメーカーで対応できていることである。たとえば、英国Worcester Bosch、BAXI、Idealは0%の水素混合ガスに対応している。その他、独のViessmannも認証済の水素混合ボイラーを販売している。家庭向けのボイラーの見積もり比較を行っている英国のBoiler Guideによると、導入コストは前述4社主要のメーカーで大きな差異は無く、ボイラーの種類、出力定格、およびモデルに応じて、500~3,000 ポンドとなっている。英国内における既存の天然ガスボイラーと比較してもさほど高くないとの分析だ。

■日本での対応と今後
 日本では三浦工業や長府工産株式会社が産業向けの水素ボイラーは製造しているが、家庭向けの水素ボイラーは販売しておらず、日本はエネファームでの都市ガスからの水素改質利用が昔から普及していることでコスト高の水素を混合するメリットが少ないのと、グリーン水素の供給が一定量可能かという問題が横たわる。こうした理由からメーカーとしても開発するニーズが現状は無いというところであろう。

 日本でも水素の混合ガス実証実験を行なった実績はある。2019年に都市ガス13A規格に適合した水素混合ガスを用いて家庭向けの供給する実証実験を秋田県能代市の模擬住宅で行った。その後、この実証実験は2021年に終了している。また、岩谷産業が2021年12月に、LPガスに水素を20%ほど混ぜて500戸の家庭に導管供給する実験の検討を福島県で2023年2月迄行うと発表(あくまで実証実験の検討を行うというもの)。何れも地方自治体での実証実験で留まっている状況であり、英国のように政府が検討を進めていくことが望まれる。

[ⅰ]https://www.telegraph.co.uk/business/2022/12/19/governments-hydrogen-boiler-plan-unrealistic-warn-mps/

https://www.worcester-bosch.co.uk/hydrogen-timeline

[ⅱ] https://www.britishgas.co.uk/the-source/greener-living/hydrogen-boilers.html

[ⅲ] https://www.boilerguide.co.uk/articles/hydrogen-boiler-manufacturers