環境省は脱炭素経営の促進に関するガイドを改定へ
~GX実現の支援は中小企業にも拡充へ~
(文責:青木 翔太)
2023年3月6日、環境省は、脱炭素経営の促進に関する4つのガイドの改定を公表した。※1同省は、各種ガイドの改定によって、企業の脱炭素経営の具体的な行動を促進することを目指している。今回改定された各種ガイドの概要を以下に示す。
(1)「中小規模事業者向けの脱炭素経営導入ハンドブック~これから脱炭素化へ取り組む事業者の皆様へ~」※2
これから脱炭素経営の取組をスタートする中小規模事業者を対象に、脱炭素経営のメリット及び取組方法について、「①知る(情報の収集、方針の検討)」「②測る(CO2排出量の算定、削減ターゲットの特定)」「③減らす(削減計画の策定、削減対策の実行)」の3ステップで解説している。手に取りやすさへ配慮し、2021年3月に環境省が策定した「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック※3」をリニューアルしている。
(2)「SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック 2022年度版」※4
GHG排出削減計画の策定に向けた検討の手順、視点、国内外企業の事例、参考データについて整理されているガイドブックとなる。改定版では、企業の取組事例(計19社)が追加で掲載されている。
(3)「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド 2022年度版」※5
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言における11の推奨開示項目のうち、企業が特に対応を悩む”シナリオ分析”に焦点を当て解説したガイドブックである。全セクターを対象としており、幅広いセクターの事例(国内外 計43社)や参考パラメータ・ツール等が掲載されている。改定版では、TCFD提言を取り巻く最新の国内外の動向や、事業インパクト評価に関する算定イメージ・算定パターンの具体例が追加されている。
(4)「インターナルカーボンプライシング活用ガイドライン~企業の脱炭素投資の推進に向けて~(2022年度版)」※6
企業の経営層や環境関連部署の担当者を読者と想定し、脱炭素の取組を推進する手法の一つであるインターナルカーボンプライシング(ICP:Internal carbon pricing)導入時のポイント・実施方法について解説したガイドラインである。IPCとは、企業内部で見積もる炭素の価格であり、企業の脱炭素投資を推進する仕組みのことである。改定版では、ICPの実践において検討すべき内容や、「令和4年度 環境省 インターナルカーボンプライシング活用支援事業」を通じた取組事例が追加されている。
上述の(1)で示した「中小規模事業者向けの脱炭素経営導入ハンドブック~これから脱炭素化へ取り組む事業者の皆様へ~」については、別途参考資料として、①知る、②測る、③減らす、の3つのステップに沿った中小企業の取り組みに関する事例集も公表されている。※7同事例集は、ステップ毎の具体的な実施内容や脱炭素経営の成果が分かりやすく整理されており、脱炭素への取り組みとして何から始めればよいか分からないという中小規模事業者の方々にとっては、特に参考になる資料であるように思う。
なお、経済産業省からも中小企業を対象とした脱炭素への取り組みを支援していく方針が示されている。2023年2月10日、同省はGX(グリーントランスフォーメーション)を通じて脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時に実現するべく、「GX実現に向けた基本方針」を公表している。※8基本方針では、「中堅・中小企業のGX推進」についても言及されており、大企業のみならず中堅・中小企業も含めたサプライチェーン全体でのGXの取組が不可欠であるとしている。また、中小企業等の取組をサポートする支援機関の人材育成や支援体制の強化、サプライチェーンで連携した取組支援や情報発信の強化、グリーン製品市場の創出などを推進していくとしている。
中小企業にも脱炭素への取り組みが求められる中、弊社としてもGHG排出量算定支援(Scope1,2) GHG排出量算定支援(Scope1,2) - BAUM Consult JapanやSBT認定取得支援中小企業の皆様にSBT認定の取得を支援致します - BAUM Consult Japanなどのサービスを通じて、中小企業の脱炭素経営の推進に寄与していきたいと考えている。
参考資料
※1
https://www.env.go.jp/press/press_01268.html
※2
https://www.env.go.jp/content/000114653.pdf
※3
https://www.env.go.jp/earth/SMEs_handbook.pdf
※4
https://www.env.go.jp/content/000116060.pdf
※5
https://www.env.go.jp/content/000118155.pdf
※6
https://www.env.go.jp/content/000116507.pdfz
※7
https://www.env.go.jp/content/000114657.pdf
※8
https://www.meti.go.jp/press/2022/02/20230210002/20230210002.html