国内CLT製造工場の整備状況
(文責:坂野 佑馬)
昨今の建築材市場で、CLTという建築構造材が注目を集めていることはご存じだろうか。これはCross Laminated Timberの略で、集成材を構成する挽き板あるいは小角材のピース(ラミナと言う)を並べ積層させ、繊維方向が直交するように重ねて接着した木質系材料である。1995年にオーストリアのウィーンで誕生し、ヨーロッパ全土に普及した。日本においては2013年12月に製造規格となるJAS(日本農林規格)*1が制定され、2016年4月にCLT関連の建築基準法告示*2が公布・施行されことで、一般利用が開始されている。
CLTは、プレカット加工により「施工が簡単かつ早い」こと、鉄筋コンクリートに比べて重量が1/5以下と「軽い」こと、木材のしなりを活かし「地震に強い」こと、そして「耐火性が高い」ことなどが利点として挙げられる。更にCLTの利用によって、施工時のCO2排出量の削減量、木材としてのCO2固定量でカーボンニュートラル達成へ貢献することが期待されている*3。
一般社団法人 日本CLT協会によると、現在JAS認定を受けたCLT製造工場は日本全国で8カ所確認されているが、関東、中部、関西にはCLT製造工場が存在しない。一方でCLT利用の実績は、内閣官房の公表しているデータ*4,5によれば、関東・中部・関西におけるCLT利用建築物数は全体の約1/3、関東だけでみても約16%と集中している傾向にある。関東・中部・関西にCLT製造工場が将来立地することで、輸送費が軽減されることでCLTのコスト削減に繋がると考えられ、CLTの利用増加に繋がる可能性もある。
カーボンニュートラル達成へ向けて、CLTの国内での普及が加速することを期待し、今後もCLT市場には注目していきたい。
参照
1.農林水産省
CLTのJAS規格
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/kikaku_clt.pdf
2.国土交通省
CLTパネル工法による新設計
https://clta.jp/wp-content/uploads/2016/04/CLT_Kanpo20160401.pdf
3.一般社団法人 日本CLT協会 HP
これを読めばわかるCLT
https://clta.jp/wp-content/uploads/2017/04/CLT_BOOK_28P_FIX_9MB.pdf
4. 内閣官房
CLTを用いた建築物一覧
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/pdf/clt_expl4.pdf
5. 内閣官房
CLT活用建築物の整備状況
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/pdf/clt_expl3.pdf