2024年以降、オーストラリアではISSB基準をベースとした気候関連情報の開示が義務化へ
～中堅・中小企業にもScope1～3の開示が求められる～

カテゴリー: サステナビリティ、環境経営

タグ: オーストラリア日本

2023年8月2日 2023年8月2日

s.aoki

(文責：青木翔太)

　2023年6月27日、オーストラリアの財務省は、気候関連情報の開示基準(案)に関する文書を公表した。^※1同省は2022年12月より、気候関連情報の開示義務化に向けた枠組みの構築を推進しており^※2、今回公表された文書では、オーストラリアにおける気候関連情報の開示基準を、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB：International Sustainability Standards Board)が開発した「サステナビリティ開示基準」に基づいて策定していくことが示されている。
　ISSBとは、国際会計基準（IFRS：International Financial Reporting Standards）の策定を担うIFRS財団が、サステナビリティに関する国際的な開示基準の策定を目的として、2021年11月に設立した組織である。ISSBは、2022年3月31日に「サステナビリティ開示基準」に関する草案を公表しており、2023年6月26日に開示基準を最終化している。^※3なお、ISSBの開示基準は、①全般的開示要求事項(S1基準)と②気候関連開示要求事項(S2基準)で構成され、②は「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4要素に基づく枠組みとなっており、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と同様の枠組みが採用されている。

　今回公表されたオーストラリアの気候関連情報の開示基準(案)について、概要を表1に示す。

表1

※1及び※4を基にBCJにて整理

　表1のように、オーストラリアの開示基準(案)における開示要求事項については、ISSB基準をベースとしつつも、現時点で詳細な内容までは示されていない。一方で、対象企業については、企業規模に応じたグループ分けがなされ、グループ毎に開示義務化の開始年を設定することが示されている。なお、開示要求事項については、各グループで共通となっている。注目すべきは、オーストラリアでは、温室効果ガス排出量のScope1～3に関して、分類されるグループに関係なく開示を求めていく点である。オーストラリアの財務省は、今後、気候関連情報の開示基準の策定を担うオーストラリア会計基準審議会(AASB：Australian Accounting Standards Board)と緊密に連携しながら、2023年度中を目途に国内基準の詳細を取りまとめていくとしている。

　日本においては、公益財団法人財務会計基準機構(FASA：Financial Accounting Standards Foundation)が、国内におけるサステナビリティ開示基準の開発や、国際的なサステナビリティ開示基準の開発への貢献を目的として、サステナビリティ基準委員会(SSBJ：Sustainability Standards Board of Japan)を2022年7月に設立している。また、2022年11月24日、SSBJは今後の委員会の運営に係る基本方針を公表しており、本方針では、ISSBが規定する基準をベースに、国内の開示基準を国際的に整合させていくことが示されている。SSBJは現在、ISSB基準に相当する日本版サステナビリティ開示基準の開発を行っており、2023年度中には公開草案、2024年度中には確定基準が公表される予定となっている。^※5

　本稿で紹介したオーストラリアに加え、海外では英国^※6、シンガポール^※7、ナイジェリア^※8といった国々がISSB基準を採用する方針を示している。ISSB基準を採用するかどうかは、各国の判断に委ねられているが、果たして日本ではどのような展開となるだろうか。日本国内では、「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正により、サステナビリティ情報に関する記載事項が有価証券報告書に新設され、2023年4月から適用されている。日本版サステナビリティ開示基準が、今後、有価証券報告書の記載事項に反映される可能性も考えられることから、SSBJによる公開草案の内容については特に注目していきたい。

参考資料

※1

https://treasury.gov.au/sites/default/files/2023-06/c2023-402245.pdf

※2

https://treasury.gov.au/consultation/c2022-314397

※3

https://www.asb.or.jp/jp/ifrs/press_release_ssbj/y2023/2023-0626.html

※4

https://www.saa.or.jp/standards/sustainability/pdf/about_issb_ed.pdf

※5

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/2023_0406.pdf

※6