自治体への提言:脱炭素化の推進に「成果連動型民間委託契約方式:PFS(Pay For Success)」の早期活用を!
(文責:河北 浩一郎)
内閣府は、新たな官民連携の手法として「成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success、以下PFSとする)」の普及に努めている。PFSとは、委託者の仕様に沿って業務を実施し検収を行い、事業の成果に関わらずその報酬として予め定めた額を支払う業務委託契約とは異なり、行政課題の解決に対応した成果指標を設定し、成果指標値の改善状況に連動して委託費等を支払う契約方式である。より高い成果の創出に向けたインセンティブを民間の受託者に強く働かせることで、行政は高い事業成果が得られることとなる。
このPFS普及促進の為に、内閣府は、先行して重点3分野(医療・健康、介護、再犯防止)を設定している。同時に、令和4年度末迄に、PFSを実施する地方公共団体の数を100団体以上とする目標を掲げている。その目標達成並びにPFSの更なる普及促進のために、内閣府は、令和4年度においても、PFS官民連携プラットフォームの運営、案件形成支援事業等の予算を計上している。
また、内閣府は、PFSの実施により、住民・民間事業者及び行政の各々に以下のメリットが期待できると、認識している。
①住民のメリット
・民間事業者による柔軟できめ細やかなサービスの提供を受けることが出来る。
・民間事業者のノウハウを活かした効果的な解決で、行政課題に対する住民の満足度が向上する。
②民間事業者のメリット
・事業提案(創意工夫など)、事業取組の意欲が大幅に向上する。
・ノウハウの蓄積・改善が進むことで、事業者の育成が促進される。
・公共サービスへの参入機会が創出される。
③行政のメリット
・個々の事業の費用対効果が高まり、ワイズスペンディング(賢い予算支出)が図られる。
・EPDM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)※1の推進が図られる。
今後、内閣府は、上述の重点3分野を中心にPFSの活用事例の蓄積を進める一方、地方公共団体等のニーズを踏まえながら、まちづくりなど重点3分野以外への横展開も進めるとしている。
現に、PFSをいち早く導入した鎌倉市の松尾崇市長は、インタビューにおいて「2050年のカーボンニュートラルに向けたCO2排出量やエネルギー削減も、民間では成果報酬型が進んでいる。将来的には、自治体のカーボンニュートラル施策をPFSで進めることも可能だと思う」(月刊事業構想2021年12月号)と答え、PFSの更なる拡がりに期待を寄せている。
昨年、内閣官房により「地域脱炭素ロードマップ」※2が公表された。このロードマップにおいて、官民連携による脱炭素への取組推進、その重要性が明確に謳われている。そのことからも、今後はPFSの脱炭素化施策への適用が進むと予想される。引き続き、動向を見守りたい。
また、海外に目を向けてみると、欧州は、官民連携による脱炭素化施策の事例を有している。
今後、欧州における官民連携手法についても、紹介していく。
※1 EPDM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案):政策の企画立案をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで政策効果の測定に重要な関連を持つ情報やデータ(エビデンス)に基づくものとすること(引用:内閣府)
※2 地域脱炭素ロードマップ:2021年6月9日、国・地方脱炭素実現会議にて作成された。地域課題を解決し、地域の魅力と質を向上させる地方創生に資する脱炭素に国全体で取組み、さらに世界へと広げる為に、特に2030年までに集中して取組・施策を中心に、地域の成長戦略ともなる地域脱炭素工程と具体策を示すもの。https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/datsutanso/index.html