FIT事業における太陽光発電設備の課題解決の一助として廃棄等費用積立制度が施工へ
(文責:坂野 佑馬)
太陽光パネルの寿命は20~30年とされており、2040年前後でFIT制度の認定を受けた太陽光パネルが一斉に稼働終了、廃棄されることが予想される。その量は約80万トンにも及び、産業物の最終処分量の6%になると環境省は推計している*1。また、太陽光パネルには鉛やセレン等の有害物質が含まれ、発電事業終了後に放置・不法投棄による環境汚染・破壊が懸念されている*2。
このような懸念を防ぐべく、廃棄等費用の積立制度が創設されることとなった。この制度は、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法*3において、2022年7月1日より開始される。制度の概要については表1の通りである。2021年9月から「廃棄等費用積立ガイドライン*4」が資源エネルギー庁より公表されているので、詳細はこちらで確認いただきたい。
表1. 廃棄等費用積立制度の概要
対象 | 10kW以上のすべての太陽光発電の認定案件 |
方式 | 源泉徴収的な外部積立 |
金額 | 調達価格の算定において想定してきている廃棄等費用の水準 |
時期 | 調達期間の終了前10年間 |
取り戻し条件 | 廃棄処理が確実に見込まれる資料の提出 |
(出所)資源エネルギー庁資料
廃棄等費用の積立金の額は、毎月の売電量に応じて決まり、以下のような計算方法となる。
廃棄等費用の積立金額(円)= 解体等積立基準額(円/kWh)×売電量(kWh)
解体等積立基準額*5は経済産業大臣によって定められており、FIT制度*6もしくはFIP制度*7の認定を受けた年度の額を採用することとなっている。また、太陽光発電設備の発電容量によっても変わり、2022年度の基準では発電容量10kW以上50kW未満では1.33円/kWh、発電容量50kW以上では0.66円/kWhと決められている。これらの数値を用いて、2022年度から認定を受ける発電容量10kWと50kWの太陽光発電設備について10年間の積立額総額を試算すると、それぞれ66,500円と330,000円となる。
他方で、太陽光パネルを解体・撤去から産廃処理を行うまでにかかる費用は、資源エネルギー庁の調査*8よりコンクリート基礎の場合10,600円/kW掛かると試算されている。この数値をもとにした発電容量10kWと50kWの太陽光発電設備の撤去費用は、それぞれ106,000円と530,000円となる。試算された積立金額と撤去費用を比較すると、双方で不足額が発生することが分かる(表2)。
表2.積立金額と撤去費用の比較
発電容量10kW | 発電容量50kW | |
積立金① | 66,500円 | 330,000円 |
撤去費用② | 106,000円 | 530,000円 |
差額(①―②) | △39,500円 | △200,000円 |
適切な廃棄を促すための制度であるにも関わらず、その積立金と実際の費用にギャップが生じてしまうのは問題があると考える。一方で、廃棄費用を低コストに抑えることができる新技術の開発・実用化が実現すれば、この問題は解決可能であるとも言える。また、国としては完全自家消費としての太陽光発電設備を推奨するための補助金を展開しており、2022年度に実施される補助金としても、「需要家主導による太陽光発電導入加速化補助金*9」、「グリーンリカバリーの実現に向けた中小企業向けCO2削減比例型設備導入支援事業*10」などが公表されている。これらを活用することで上述のギャップを埋められる可能性はあるかもしれない。
今後、廃棄等費用積立制度には修正が加えられていくと考えられるが、基本的には自社で廃棄の費用を準備しておくことが当然の義務であるように思う。太陽光発電設備の導入に至った主目的を忘れず、地球の環境を損なわないことを願う。
参照
1.環境省 大臣官房廃棄物・リサイクル対策部 企画課 リサイクル推進室
太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版)(2016.3)
https://www.env.go.jp/press/files/jp/102441.pdf
2.環境省 大臣官房廃棄物・リサイクル対策部 企画課 リサイクル推進室
太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)(2018)
https://www.env.go.jp/press/files/jp/110514.pdf
3.資源エネルギー庁
再エネ特措法改正関連情報
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/FIP_index.html#fip_seido
4.自然エネルギー庁
廃棄等費用積立ガイドライン(2021.9)
5.令和3年度以降(2021年度以降)の調達価格等についての委員長案
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/067_01_02.pdf
6.資源エネルギー庁
FIT制度(固定価格買取制度)概要
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html
7.資源エネルギー庁
FIP制度概要
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fip_2020/fip_document02.pdf
8.資源エネルギー庁
太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度について
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fip_2020/fip_document03.pdf
9.資源エネルギー庁
需要家主導による太陽光発電設備導入促進補助金
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2022/pr/en/shoshin_taka_33.pdf
10.環境省
グリーンリカバリーの実現に向けた中小企業等のCO2 削減比例型設備導入支援事業
https://www.env.go.jp/guide/budget/r04/r04juten-sesakushu/1-1_19.pdf