ジョー・バイデン大統領はSAF、水素、グリーン燃料税額控除、CCS推進に係るInflation Reduction Actに署名
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(文責:青野 雅和)

 米国ホワイトハウスの発表によるとジョー・バイデン大統領は2022年8月16日、Inflation Reduction Act[i]に署名した。同法はインフレへの対応、国内のエネルギー生産、CO2排出量の削減、メディケアと医療費等、幅広い問題に対処したものである。

 米国におけるバイオ燃料・バイオエネルギーセクターにとって興味深いのは、同法によって、SAF(Sustainable Aviation Fuel)・グリーン燃料・グリーン水素に対する税額控除が確立したことである。同法では、再生可能由来のディーゼル燃料やバイオディーゼルなどの輸送用バイオ燃料における既存の税額控除を拡張することや、バイオ燃料製造インフラ開発のための資金も含まれているようである。加えて、バイオガスおよびバイオマス発電の支援や、住宅所有者がバイオマス焚きの住宅用暖房器具を設置するための税制上の優遇措置を提供することも書き添えられている。以下にグリーン燃料関連の記載を紹介する。

  • SAFに対する税額控除等

 1.25$/ガロン~1.75$/ガロンであり、米国にSAF製造拠点を置くプロジェクトに助成金を提供することも予定しており、約2億5,000万$の資金が利用可能とのこと。

  • グリーン燃料生産税額控除

 2025年、2026年、2027年に生産・販売される輸送用グリーン燃料に適用されるもので、既存のディーゼル燃料と比較して約40%のGHG削減を達成する等の条件が必要。

  • グリーン水素に対する税額控除

 2032年末までに建設を開始するグリーン水素に対して、再生可能電力生産税額控除 (PTC:Renewable Electricity Production Tax Credit、米国税法第45条[ii]に含まれるキロワット時(kWh)あたりの連邦税額控除)に2022年末以降に適用することとなった。控除は12¢/kg~3$の範囲になる可能性がある。

  • 再生可能由来のディーゼル燃料やバイオディーゼル

 ブレンド税額控除である1$/ガロンは、2024年末まで延長され、代替燃料税額控除はガ50%/ガロンの、第2世代バイオ燃料所得税額控除、代替燃料車給油不動産控除も拡大しています。
さらに、バイオ燃料の混合、貯蔵、供給または分配のためのインフラ改善等への支援に5億ドルを充当させ、家庭でバイオ燃料を利用させるための家庭用暖房油流通センターを建設させる様促し、気候に配慮した農業を支援するために推定180億ドルを拠出する予定としている。

 また、同法ではCCSプロジェクトをサポートし、クレジットを事業に寄与することとしている。この点も非常に興味深い。事業推進及び拡大のために適格な政策を示している。この点は日本政府もベンチマークするのではなかろうか。

  • CCSプロジェクトへの支援

 2033年1月1日以前に着工する炭素回収、直接空気回収、炭素利用プロジェクトに拡大し、CO2を回収する産業施設や発電所に対する控除額を、安全な地層に貯留されたCO2の場合は85$/metric ton、回収したCO2を再利用する場合は60$/metric ton、油田・ガス田にCO2を貯留する場合は60$/metric tonとなる。直接空気回収技術で回収したCO2については3通りを示している。①安全な地層に貯留するプロジェクトについては180$/metric ton、②炭素利用については130$/metric、③油田・ガス田に貯留する場合は130$/metric tonのクレジットとする。


[i] BY THE NUMBERS: The Inflation Reduction Act - The White House

[ii] 再生可能電力生産税額控除情報|米国環境保護庁 (epa.gov)