中国はカーボンフットプリント管理システムを2027年迄に整備

(文責:坂野 佑馬)

 2024年6月5日、中国・生態環境部は2030年迄にカーボンフットプリントに関する国際的なルール作りに貢献することを目的とした計画を発表した。[i]同省のニュースリリースによると、この計画は中国におけるCFP(Carbon Footprint of Products:製品のカーボンフットプリント)の管理を明確にするものだという。計画では、2027年迄に同国において「カーボンフットプリント管理システムの確立」を目指すと記載されている。
 中国は世界最大の炭素排出国として、持続可能な経済成長と環境保護の両立を図る必要がある。国内外での環境規制強化と気候変動対策の推進に伴い、カーボンフットプリント管理の必要性が高まっている。今回の計画は、欧州への輸出製品の競争力を維持するためのEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM:Carbon Border Adjustment Mechanism)への対応に焦点が当てられている。

 具体的な取組として、生態環境部は2027年を目途に石炭、天然ガス、リチウム電池、鉄鋼、アルミニウム、電気自動車など、約100種類の主要製品に対して、製品別のCFP算定ルールを確立させるとしており、更に、2030年には約200種類の製品にまで対象範囲を拡大していく方針であると伝えている。また、算定ルールの確立と同時に、CFP表示、認証、管理のための制度やデータベース・分析ツールの開発も推進していくことも記載されている。

 他方で、中国は2023年2月に世界初の自動車のCFPを公開した「Carbon Publicity Platform(CPP)」というWebサイト(原因は特定できないが、弊社アクセスではサイト内の一部ページが閲覧不可であった)[ii]が開設している。CPPには、原材料の生産、自動車の製造、使用、メンテナンス、廃車、リサイクルなど、自動車のライフサイクルの全段階のデータが含まれる。メディア報道によれば、2023年6月19日時点においては、約1,400種類の中国製自動車についてのCFPデータが公開されていたようだ。

 上述のように、中国国内においてはCFPの適切な利用および普及を促進する動きが見られる。日本国内においても経済産業省の主導の下、各種ガイドラインや製品別算定ルールの策定が行われている。各省庁の普及啓発により一般常識となりつつあると思うが、脱炭素を進めるための一丁目一番地として、GHG排出量の算定が極めて重要である。こうした認識は今後より広く浸透していくことになるであろう。
 日本企業の現状としては、GHG排出量算定が重要であることは把握しつつも、組織単位のGHG排出量(一般的にサプライチェーン排出量と呼ばれる企業の事業活動全体におけるGHG排出量のこと)の算定に留まっており、CFPの算定までを検討できている企業はごく少数なのではないだろうか。中小企業で言えば、組織単位の排出量の中でもScope1,2(Scope1:事業者自らによるGHGの直接排出、Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)の算定までしか検討できていないというのが現実であろう。是非、経営者の方々には、将来的に求められることになるであろうGHG排出量の算定に関する展開を把握しておいて頂きたく、弊社としても継続的に情報の提供に務めていく。

引用

[i] https://www.reuters.com/business/environment/china-establish-carbon-footprint-management-system-by-2027-2024-06-05/

[ii] http://en.auto-cpp.com/Publicity/Index