グリーン水素ベース燃料の燃料利用を2034年迄に5000t以上の船舶運航者に義務付けへ
(文責:青野 雅和)
EU理事会は7月25日に、「FuelEU Maritime」を正式に採択した 。[ⅰ]このイニシアチブは、ヨーロッパで運航する船舶からの温室効果ガス排出量を2050年までに80%削減するとともに、グリーン水素ベースの「Renewable fuels of non-biological origin(RFNBO:非生物由来の再生可能エネルギー燃料)」の摂取量を増やすことを目的としている。RFNBOの定義はグリーン水素と合成燃料となる。この場合のグリーン水素はCo2排出削減量が73.4%以上と定義されている。弊社NEWSでも3月20日に掲載したので参照されたい。
EU理事会によれば、「FuelEU Maritime」は夏以降にEUの官報に掲載され、この掲載の20日後に発効する予定である。新しい規則は、2024年8月31日から適用される第8条と第9条を除き、2025年1月1日から適用される。
FuelEU Maritimeは総トン数が5,000tを超えるすべての船舶に対し、どの船籍を掲げているかに関係なく、2025年初頭から温室効果ガス排出量を2%削減することを義務付けている。基準排出原単位91.16g CO2/MJである。なお、削減義務は順次厳しくなる予定で、2030年以降は6%、2035年以降は14.5%、2040年以降は31%、2045年から62%、そして2050年から最終的に80%まで徐々に上昇する 。[ⅱ]
これらの排出削減量は、加盟国の管轄区域内の港にいる間、または2つの加盟国の港の間を移動中に使用されるエネルギー、または加盟国と非EU諸国の間の航海で使用されるエネルギーの半分に基づいて計算される。すなわち日本からEUに寄港する船舶はCO2の削減が求められることとなる。特定の加盟国で船舶を運航する企業は、2024年8月31日までに排出量監視計画をその国の認定検証機関に提出する必要がある。
もう一点、特筆すべきは海上船舶の運航者に対し、2034年までにグリーン水素ベースの燃料(RFNBO)を少なくとも1%使用することを義務付けることである。
RFNBOの導入にインセンティブを与えるため、FuelEU Maritimeは、これらの燃料を使用することによる温室効果ガス排出削減量を、2033年末まで2回カウントすることを認めている。
なお、RFNBOは、EUの委任法が定める定義に従わなければならない。これには、「航行中」の船舶での全ての燃料消費の全てに対し、温室効果ガスを70%削減することが含まれる。
欧州委員会はまた、FuelEU Maritimeに該当する船舶が使用する最終エネルギーに占めるRFNBOの年間使用量を定期的に監視する。もしこの割合が2031年に1%を下回り未達成となった場合、EUは2034年から船舶で使用される燃料の2%をRFNBOが占めるという更に厳しい措置をとることとなる。
日本でもアンモニアや水素、バイオディーゼル、グリーンメタンなど、船舶燃料をどうするか検討が重ねられていることは筆者も認識しており、自治体へのインフラ検討も展開している。その中で考えている個人的な見解は、海外から調達することを検討する方が船主のコスト負担も少なく、自動車やバスでの利用も可能であることから、HVOのような船舶のドロップイン燃料の製造と調達を検討することである。
EUでは政策のボタン押しが進む中、日本企業は日本の政策とは関係なく、グローバルな対応に迫られている状態といえよう。
[ⅰ]
[ⅱ]