2032年末までに国土面積の2%(約7,000k㎡)を陸上風力発電指定区域へ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
～陸上風力法を新たに閣議決定へ〜

カテゴリー: 再生可能エネルギー、脱炭素化

タグ: ドイツ

2022年6月29日 2022年7月26日

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(文責：青木翔太)

　2022年6月15日、ドイツは陸上風力発電の拡大・加速化を目的として、新たに「陸上風力法」を閣議決定した。^※1本法案は、2032年末までに国土面積の2%(約7,000km²)を陸上風力発電に利用することを目標としている。

　今回閣議決定された内容の説明に先立って、ドイツの陸上風力発電に関する近年の動向を紹介したい。

　再生可能エネルギーのさらなる拡大を目指すドイツは、2022年4月6日にエネルギー戦略「イースターパッケージ」を発表している。この発表で言及された「再生可能エネルギー法(Erneuerbare Energien Gesetz：略称EEG)」の改正案では、2030年までに国内の総電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合を80%に、2035年以降は100%にすることを目指すとしている。陸上風力発電に関しては、毎年10GW以上を追加導入し、2030年までに115GWにする目標を掲げている。「イースターパッケージ」については、弊社NEWSによる5/9掲載の記事を参考にしていただきたい。^※2

　2021年時点では、陸上風力発電は図1に示すようにドイツの再生可能エネルギー設備容量の約40%を占めており、主要な再生可能エネルギー源となっている。^※3

図1. ドイツにおける電源別の再生可能エネルギー設備容量(2011年～2021年)

出展：連邦エネルギー水道事業連合会の統計データを基にBCJ作成

　一方で、ドイツ風力エネルギー協会(Bundesverband WindEnergie：略称BWE)によれば、ここ数年にかけて陸上風力発電の新規導入容量が急速に落ち込んでいる。2018年以降の新規導入容量においては、導入容量が最も多かった2017年(5.3GW)に比べて半分以下となる状態が続いている。^※4BWEは、この要因として、設置場所の不足や複雑な許認可手続きを挙げており、政府が掲げる陸上風力発電の導入容量の目標を達成するためには、設置場所や許認可に関する状況の改善が不可欠であると主張してきた。

　このような状況の中、閣議決定された「陸上風力法」では、以下の規定内容が示されている。

・連邦各州に対して導入拘束義務のある「区域目標」を規定する。2032年末までに都市州(ベルリン、ハンブルク、ブレーメン)は土地面積の0.5%を、その他の連邦州は1.8～2.2%を陸上風力発電の指定区域にする必要がある。この目標値を達成した州は、指定区域の一部を他の州に譲渡することができる。

・連邦各州は風力発電設備及び指定区域からの最低離隔距離を規定することが可能となる。ただし、各州が独自に定める最低離隔距離の規定によって、指定区域の目標達成ができない場合はこの限りでない。

　なお、現時点において、ドイツで陸上風力発電に利用可能な土地は、国土面積の僅か0.5%に過ぎない。つまり、残りの1.5%の土地を各州の指定区域から生み出すことを目指す。冒頭に記載した国土面積の2%という目標は、ドイツの2030年までの再生可能エネルギー目標(総電力消費量比80%)を達成するのに必要な指標とされている。

　また、ドイツは「連邦自然保護法」の改正を行い、陸上風力発電設備の許認可手続きの簡素化に取り組むとしている。この改正では、生物種の保護に関する国内の統一基準、絶滅危惧種の保護区が定められるとともに、景観保全地域を陸上風力発電の指定区域候補地に含むことが規定される。これにより、ドイツは環境に配慮した陸上風力発電の拡大・加速化を図っていく方針だ。

　上述で紹介した法案は、今後、連邦議会と連邦参議院による承認手続きが行われ、2023年初期に施行予定となる。

参考資料

※1　連邦経済・気候保護省

https://www.bmwk.de/Redaktion/DE/Pressemitteilungen/2022/06/20220615-bundeskabinett-beschleunigt-naturvertraglichen-windkraft-ausbau-deutlich.html

※2　弊社NEWS【ドイツは再生可能エネルギーの拡大を目的に、EEGの改正を含む「イースターパッケージ」を公表】