ドイツではエネルギー効率化法(EnEfG:Energieeffizienzgesetz)が成立へ
~州政府に対してもエネルギー消費の削減目標を課す~
(文責:青木 翔太)
2023年9月21日、ドイツ連邦経済・気候保護省は、ドイツ連邦議会がエネルギー効率化法(EnEfG:Energieeffizienzgesetz)を可決したことを発表した。※1 EnEfGにより、ドイツ政府はエネルギー効率を高めるための分野横断的な法的枠組みを初めて確立した。
EnEfG の主な内容を以下に示す。
・国内における最終エネルギー消費量を2030年までに2008年比で26.5%削減する。この目標を達成するためには、現状から2030年までに約500TWhのエネルギー消費量を削減する必要がある。連邦政府は目標の達成状況について連邦議会に定期的に報告し、必要に応じて法制度の再調整を図る。なお、2020年時点における最終エネルギー消費量の削減率は、2008年比で17.3%となっている。※2
・2024年以降、連邦政府と州政府には、エネルギー消費量を2030 年までに年間 45 TWh (連邦政府)、3 TWh (州)削減する目標が課し、目標達成に向けた省エネルギー対策の実施を義務付ける。
・公共部門には、最終エネルギー消費量を年間2%削減することを目的とした省エネルギー対策の実施を義務付ける。
・最終エネルギー消費量が年平均7,5GWh以上の企業には、エネルギーまたは環境管理システムの導入を義務付け、年平均 2.5 GWh 以上の企業には、省エネルギー対策を実施し、その記録を公表することを義務付ける。具体的にどのような省エネルギー対策を取るかは、各企業の判断に委ねられる。
・データセンターは、将来的に排熱利用と必須とするほか、再生可能エネルギーの利用やエネルギー消費量を公表することを求める。
なお、ドイツでは、2021年度における建築分野のGHG排出量が年間許容値の112 MtCO2eを超過した115 MtCO2e であったとされており※3、この結果を受けて、連邦経済・気候保護省と連邦住宅・都市開発・建築省は2022年7月13日に、2030年の気候変動対策目標(建築分野:CO2排出量を1990年比で66‐67%削減)を達成するために建築物緊急プログラム※4を共同で発表している。EnEfGの策定は同プログラムにおける施策の一つとされていたことから、GHG排出削減目標の未達への対応策として、法規制が着実に整備されていることが伺える。
日本においても、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、省エネ法が2023年4月に改正施行されている。改正省エネ法では、これまでと同様に一定規模以上の事業者(原油換算1,500kl/年以上使用する事業者、特定輸送事業者、特定荷主※5:以下、特定事業者等)を対象にした上で、①エネルギーの使用の合理化、②非化石エネルギーへの転換、③電気の需要の最適化(旧:電気の需要の平準化)、の主に3項目において変更がなされている。①については、エネルギーの使用の合理化の範囲に、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーや、水素、アンモニア等の非化石エネルギーが追加されている。(従来は化石エネルギーのみ) また、②については、非化石エネルギーへの転換の目標に関する中長期計画の作成及び非化石エネルギーの使用状況の定期報告を行うことが、特定事業者等に義務付けられている。改正省エネ法では、非化石エネルギーの利用を向上させることが特定事業者等に求められていると言えよう。
本稿で紹介したEnEfGの内容で示されるように、連邦政府のみならず、州政府に対しても削減目標への責任を課し、事業者と一体となってエネルギーの効率化を推進してくドイツの姿勢は評価すべき点であろう。日本においても、EnEfGにおける規制内容や、それに伴うエネルギー削減の効果を参考にしながら、省エネルギーに向けた政策・規制等が継続的に強化・見直しされることを期待したい。
参考資料
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特定輸送事業者:
輸送能力が、一定基準以上「鉄道300両、トラック200台、バス200台、タクシー350台、船舶2万総トン(総船腹量)、航空9千トン(総最大離陸重量)」である者を指す。
特定荷主:
年間の貨物輸送量が3,000万トンキロ以上の荷主を指す。