英国は2025年10月にデポジット・リターン・スキーム(Deposit Return Scheme：DRS)を導入へ
～飲料容器のリサイクル率向上を目指す～
s.aoki(文責：青木 翔太)
2023年1月20日、英国の環境・食糧・農村地域省(Department for Environment, Food and Rural Affairs略称: DEFRA）は、イングランド、ウェールズ、北アイルランドを対象として、2025年10月から飲料容器のデポジット・リターン・スキーム(Deposit Return Scheme 略称：DRS)を導入することを発表した。※1DRSとは、製品価格に一定額の預託金を上乗せして販売し、製品が使用後に返却された場合に預託金を返却する制度のことである。DEFRAは、英国の飲料容器のリサイクル率が現時点で約70%となっており、毎年約40億本の飲料ペットボトルと約27億本の飲料缶がリサイクルされていない、としている。今回の発表に伴い、DEFRAはDRSについての意見公募に対する政府回答を公表した。※2政府回答の主な内容を以下に示す。
・DRSの対象となる飲料容器は、容量が50mL～3Lのペットボトル、スチール缶、アルミ缶となる。なお、ウェールズではこれらに加えて同容量のガラス瓶も対象となる。
・DRS対象となる飲料容器には、DRSの対象製品であることが認識できるマークのほか、返却時に読み取り可能なバーコードやQRコードの表示が義務付けられる。
・DRSの対象となる飲料容器を販売する小売業者に対しては、返却ポイントの設置を義務付ける。
・DRSの対象となる飲料容器をオンラインにて販売する業者に対しては、使用後の飲料容器の引き取りサービスの導入を義務付ける。
DEFRAは、2019年2月18日に廃棄物の削減に向けた政府計画を発表しており※3、この計画の一つに、DRSの導入を掲げていた。DRSの対象とする製品については、表1で示す2つの案について意見公募が行われていた。結果としては、前項の政府回答で示したように、素材は提案されていたものと同素材となり、容量は50mL～3Lに絞られる形となった。
表1
英国は欧州各国がDRSによって飲料容器のリサイクル率の向上に成功していることを強調しており、フィンランド、ノルウエー、ドイツではDSRによる飲料容器の回収率が90%を超えているとして、DSRを導入する意を示した。英国は将来のDRSの導入により飲料容器の回収率：85%以上を目指すとしている。なお、スコットランドでは英国全土に先駆け、2023年8月からDRSを導入することが決まっている。
上述の政策に加えて、DEFRAは、イングランドでの使い捨てプラスチック製品の禁止対象を2023年10月から拡大することを発表しており、プラスチック製の皿、トレー、ボウル、カラトリー、風船スティックなどの販売を禁止するとしている。※4さらに、英国では、2024年４月から包装の拡大生産者責任が強化され、家庭で廃棄される包装材の処理費用の全額を生産者が負担することが予定されている。※5
さて、昨年の3月2日にケニアの首都ナイロビで開催された国連環境総会※6では、プラスチック汚染は地球規模の喫緊の課題であることが示されている。英国における容器包装の社会における取組みは今後どのようになっていくだろうか。前述のようにドイツ等、他国の成功事例を模範にした政策であり、英国の姿勢は評価できる取り組みである。一方で、使い捨てプラスチック製品の削減に向けた日本の取り組みに目を向けてみると、2022年4月から「プラスチック資源循環法」※7が施行されているものの、「使い捨てプラスチック製品の使用の合理化を小売・サービス事業者に求める」といった内容に留まっている。使い捨てプラスチック製品の禁止対象をさらに拡大していこうとする英国やその他欧州の各国の姿勢を、日本も見習っていくべきであるように思う。
参考資料
※1
https://www.gov.uk/government/news/deposit-return-scheme-for-drinks-containers-moves-a-step-closer
※3
https://www.gov.uk/government/news/government-sets-out-plans-to-overhaul-waste-system
※4
https://www.gov.uk/government/news/far-reaching-ban-on-single-use-plastics-in-england