代替燃料インフラ規制(AFIR)によりEU全体での水素ステーション建設が加速か
~オランダでは水素ステーションの補助金を公表~
(文責)青野 雅和
かねてより欧州議会で同意されていた代替燃料インフラ規制 (Alternative Fuels Infrastructure Regulator: AFIR)が9月22日に成立した。これにより、ヨーロッパ全土に数百の水素充填所が設置されることが決定した。また、輸送セクターはGHG排出量のさらなる削減に迫られることとなる。
AFIRは、EUの加盟27カ国すべてに対し、大型車両と軽車両の両方にサービスを提供できる公的にアクセス可能な水素ステーションを確保することを義務付けた規制であり、2030年までに計画されている欧州横断交通ネットワーク (Trans-European Transport Network:TEN-T[ⅰ]) の中核ルートに沿って、すべての「アーバン ノード」および200kmごとに水素ステーションが設置されることとなる。
「アーバン ノード」とは港湾、空港、鉄道ターミナルを備えた圏域内の 424 の主要都市を指す EU 用語であり、今後10年で完成する予定である。
下記に若干ながら、オランダとドイツの関連情報を記載する。
■オランダ:水素モビリティ導入及び水素ステーション建設に対する補助金
このAFIRの展開を鑑み、オランダ政府では水素トラック、バン、バス、ガソリンスタンドに1億5,000万ユーロの補助金を与える計画を発表している。オランダにはアーバン ノードが24か所あり、2025年までに50か所の水素充填所を開発することである。現在運営されている水素ステーションは14か所であること、また重量物輸送に適しているのは「そのうちの一部」だけであることから、今回の補助金は車両1台あたり最大30万ユーロ、ガソリンスタンド1台あたり最大200万ユーロの資金提供を行うとのこと。
補助金の対象モビリティと金額
出典:Hydrogen insight
■ケルン市:2024年末までに160台の水素バスを運行へ[ⅱ]
ケルン市のバス運営会社、地方都市ケルン (RVK)は現在 72 台の燃料電池バスを運行しており、ポーランドのバスサプライヤーのソラリスからさらに20台の車両を注文した。また同市は来年末までに160台の水素バスを道路に導入する予定で、ケルン郊外のボン市などいくつかの小都市へも運行している。RVKによれば、「天候や地形条件に関係なく350kmの航続距離が保証される」という。
■ロストック市がディーゼルバスを全台燃料電池バスに置き換える[ⅲ]
ドイツ北東部の港湾都市ロストック市から周辺地域へのサービスを提供するRebus Regionalbus社はディーゼルバス170台すべてを燃料電池に置き換える計画の一環として、ポーランドの製造会社ソラリスに水素バス52台を3000万ユーロ(3290万ドル)で発注した。
[ⅰ]
EU 全体で一貫性があり効率的でマルチモーダルな高品質の輸送インフラを開発するための重要な政策。鉄道、内陸水路、近海航路、都市ノード、海上および内陸の港、空港、ターミナルを結ぶ道路で構成されている。2023年10月1日現在、11のTEN-T コア ネットワーク コリドーを推進している。https://transport.ec.europa.eu/transport-themes/infrastructure-and-investment/trans-european-transport-network-ten-t_en
[ⅱ]
[ⅲ]
https://www.solarisbus.com/en/press/gustrow-places-order-for-52-hydrogen-buses-1946