低炭素燃料認証委任法案に対しHydrogen Europeなど17の業界団体が共同声明を公表 ~第三国のCCU/CCS由来の製品に影響を与える可能性も~

(文責:青野 雅和)

 EUは2024年9月27日に「低炭素燃料認証委任法案:Low-Carbon Fuels certification draft Delegated Act」に関するパブリックコメントのフィードバック[i]を開始しており、10月25日までを締め切りとして受け付けていたが、その最終日にプロジェクト開発者、生産者、インフラ事業者、市場関係者、および低炭素燃料(低炭素水素およびその派生物など)のHydrogen Europeなど17の業界団体が共同で「低炭素燃料認証委任法案の改訂を要請」する声明を公表した[ii]。17の団体を図1に示す。

図1 低炭素燃料認証案の改訂を要請した17の業界団体

出典:Eurogas

 この声明では低炭素燃料の温室効果ガス排出削減を決定するための方法論を定めている「低炭素燃料認証委任法案」において、いくつかの側面について懸念を表明しており、「効果的で包括的、そして欧州のエネルギーと気候の目標に完全に合致したもの」に改訂するよう求めている。
 この声明によれば、低炭素燃料は現在、EUの規制枠組みにおいて限定的な評価とインセンティブしか受けていないことに留意する必要があると指摘している。声明に関する要約を示す。

  • 燃料のGHG強度の計算に関して
     月単位、またはより細かい間隔で平均して行う必要がある。
  • CCS/CCUの承認
     第三国における CCS の承認に関する条件/タイムライン、固体炭素に関する規定、または永久 CCU (ETS から) に加えて長期持続性製品の概念の導入など、いくつかの規定について明確化する必要があることを強調する。
  • 低炭素燃料とRFNBOのGHG排出量計算に水素漏れ検知技術を統合する前の前提条件
     水素漏れ検知技術の技術的成熟度と利用可能性を考慮することの重要性を強調する。
  • トレーサビリティ規定に関して
     再生可能ガスに定義されたトレーサビリティ規定が低炭素ガスにも適用されるように欧州委員会に奨励する。また、欧州に輸入された低炭素燃料がシステム内で適切に認識されるようにする必要がある。
  • 低炭素燃料認証委任法の2030年の見直し
  • 自主認証制度の認定
     欧州委員会が自主認証制度の認定の迅速かつ効率的なプロセスを促進するよう奨励する。

 欧州の低炭素認証の動向は日本のみならず世界各国で注目すべき事項であり、今後のゲームチェンジャーであるCCUにも大きな影響を与えることとなる。既にドイツではCCS/CCUの実現を支援するCMSのドラフトが公表され、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)の利用、CO2の輸送と海底貯蔵を可能にするCCS法が整理されているが、本紹介の法案はEU全体のCCU/CCS利用も低炭素燃料認証委任法としてEU全体をカバーすることとなる。

 さて、本法案における日本は、EUにとって第三国となり、前述したように、日本を含む第三国のCCSプロジェクト等をレビューして検証するような記述となっている。その意味では、日本のプロジェクト由来の水素や半製品の原料がEUに輸入される際に、それ等の低炭素燃料に対し評価を与えるような印象を受ける。従い本法案の動向と結果を注目する必要があるであろう。

 なお、パブリックコメントのフィードバックには図1以外のEU各国の研究機関や業界団体及び企業・個人の228件の意見が掲載されている。興味のある方は是非参考にされたい。

引用


[i] https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/14303-Methodology-to-determine-the-greenhouse-gas-GHG-emission-savings-of-low-carbon-fuels_en

[ii] chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://iogpeurope.org/wp-content/uploads/2024/10/241025-Joint-Statement-on-the-Low-Carbon-Fuels-certification-draft-Delegated-Act.pdf