オーストラリア政府は海底ケーブルによるシンガポールへの太陽光発電由来の電力輸出計画を承認
(文責:坂野 佑馬)
2024年8月21日、オーストラリア政府は「Australia-Asia PowerLink(AAPowerLink)」[i]というノーザンテリトリー(Northern Territory)の約12,400 ヘクタール(東京ドーム約2,652個分)という広大な土地に最大20 GW太陽光発電所を建設し、オーストラリアからシンガポールへ再生可能エネルギーを輸出する計画(図1を参照)を環境保護・生物多様性保全法(EPBC)に基づき、承認した。[ii]同プロジェクトには約200億豪ドル(約1兆9,500億円)が投じられる予定で、ノーザンテリトリーに立地する都市ダーウィンの約300万世帯に発電容量4 GW分の太陽光発電由来の電力を供給する。更に、約4,300 kmの海底ケーブルを通じて、シンガポールに発電容量2 GW分の電力を供給することも計画の範疇となっており、シンガポール政府が2035年までに目指す4 GW分の低炭素電力輸入体制の構築に大きく貢献することとなる。
図1. Australia-Asia PowerLink プロジェクトにおける電力ケーブル配備図
出所: Sun Cable 社のHPより引用
AAPowerLinkプロジェクトは、オーストラリアのソフトウェア企業であるAtlassian社の共同創業の1人であるマイク・キャノン・ブルックス氏と、鉄鉱石採掘を行うFortescue Metals Groupの創業者であるアンドリュー・フォレスト氏が共同で設立したSun Cable社が進めており、シンガポールやインドネシアへの再生可能エネルギー供給を目指している。然しながら、プロジェクトの規模が拡大するにつれ、コストの上昇やパートナー間の意見対立が発生し、2023年にSun Cable社は破産に追い込まれた。それでもブルックス氏はプロジェクトの継続を推進し、 同氏が所有する Grok Venturesを筆頭としたコンソーシアムがSun Cable社を買収し、新体制として展開を進めている。
同プロジェクトの最終的な投資決定は2027年に予定されており、2030年には電力供給の開始が見込まれている。同プロジェクトが成功すれば、オーストラリアはシンガポールやインドネシアに対して再生可能エネルギーを大規模に供給する先駆的な国となり、世界のクリーンエネルギー市場においてプレゼンスを示すことができると政府関係者は期待している。
今後の国内外における国際送電の展開はベンチマークしていきたい。
引用
[i] https://www.suncable.energy/our-projects
[ii] https://www.suncable.energy/news/suncable-receives-major-commonwealth-government-environmental-approval-for-flagship-project