ドイツ政府 水素製造・貯蔵・輸入インフラの加速的拡大に向けた法的方針(Hydrogen Acceleration Act:水素加速法)を決定
(文責:青野 雅和)
ドイツ連邦内閣は5月29日、水素製造・貯蔵・輸入インフラの加速的拡大に向けた法的方針である「水素加速法」を可決した。この法律は、2023年に更新された「水素国家戦略」[i]に沿って、水素の製造・貯蔵・輸入のためのインフラを迅速に開発・拡大するための法的枠組みを構築する目的とした法律である。
連邦経済気候保護省(BMWK)によれば[ii]、「効率的な水素インフラは、産業の脱炭素化にとって極めて重要である。水素パイプラインは産業中心地のライフラインとなる。電解槽や輸入ターミナルをできるだけ早く稼動させるためには、無駄のない、そして何よりも迅速な計画・認可手続きが必要です。水素加速法は、その方向性を打ち出した。この法律は、水素の製造、貯蔵、輸入を行うインフラ・プロジェクトの認可に対する障害を取り除くものである。これは、水素経済への道における新たな一里塚である」と、同省大臣であるロバート・ハベック氏が述べたことを伝えている。
水素加速法は、関連する計画、認可、調達手続きを加速化、簡素化、デジタル化すると規制要件が緩和されるとのこと。同法には「環境法と公共調達法、エネルギー産業法、自動車道路法、空間計画法、行政裁判所法の改正」が含まれており、水法に基づく承認手続きの最長期限、承認手続きのデジタル化、措置の早期開始のための簡素化、裁定手続きの迅速化、上訴手続きの短縮、迅速手続きの迅速化、電解槽の近代化に関する公的審査手続きの短縮などが規定されている。同法のポイントは以下の2点。
1.同法では水素インフラの開発を加速
同法ではグリーン水素製造施設、H2パイプライン、水素およびアンモニア輸入ターミナル、アンモニアクラッカー、電解装置設備に供給する送電線、および輸入ターミナルや液体有機水素運搬船(LOHC)の処理施設などのインフラの整備に適用される。
2.水電解水素製造装置における取水の影響を避けるよう配慮
BMWKによれば、同法では、飲料水と水収支を保護するため、電解槽による大幅な水消費に対して差別化されたアプローチをとっている。従って、水不足の危険性がないケースでは、電解槽の設置に対する最優先の公益が無制限に適用されるが、電解槽による取水が、公共の水供給や水収支を著しく損なう可能性がある問題のあるケースでは、同法における水素製造を目的とした優先的公益は適用されないと記述されている。具体的には、公共水道の中核的な構成要素である飲料水供給が影響を受ける可能性がある場合や、氾濫原、湿原、保護された湿地帯など、気候保護に関連する地域が直接的かつ不可避的に影響を受けるような問題がある場合を指す。
同法では、第4連邦排気ガス規制条例(Bundesimmissionsschutz- Verordnung :BImSchV)の改正により、電解槽の認可手続きが簡素化され、5MW以下の小型電解槽については完全に撤廃される。近々予定されている建築法の改正も、建築計画法における電解槽の取り扱いを容易にすることとしている。
同法の成立に向けた次のステップは、連邦参議院、そして連邦議会での法案審議となる。
引用
[i] chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.bmwk.de/Redaktion/EN/Publikationen/Energie/national-hydrogen-strategy-update.pdf?__blob=publicationFile&v=2
[ii] https://www.bmwk.de/Redaktion/DE/Pressemitteilungen/2024/05/20240529-bundesregierung-stellt-weichen-fuer-den-beschleunigten-ausbau-von-wasserstoffprojekten.htm