英国では使い捨てプラスチック製品の禁止対象が拡大へ
～EUのサーキュラーエコノミーと整合を図る～
s.aoki(文責：青木 翔太)
2023年９月29日、英国の環境・食糧・農村地域省(DEFRA：Department for Environment, Food and Rural Affairs）は、イングランドでの使い捨てプラスチック製品の禁止対象を拡大し、2023年10月1日よりプラスチック製のカトラリー（フォーク、ナイフ、スプーン等）、風船の棒、及びポリエチレン製のカップ・食品容器の販売を禁止することを発表した。※１イングランドでは、2018年10月1日からプラスチック製のストロー、マドラー(飲み物をかき回す棒)、及びプラスチック製の芯を使う綿棒の販売が禁止されているものの、使い捨てプラスチック製品の現時点のリサイクル率はわずか10%であった。今回のプラスチック製品の禁止対象の拡大については、事前に意見公募が行われており、DEFRAは、国民の95%の支持を得たと公表している。
また、DEFRAは、飲料容器のデポジット・リターン・スキーム(Deposit Return Scheme 略称：DRS※2)の導入や、拡大生産者責任の強化※3を図ることで、今後もプラスチック廃棄物の削減に向けた取り組みを推進していくとしている。
なお、DRSについては、イングランド、ウェールズ、北アイルランドを対象として（スコットランドは現在対象となっていない）、2025年10月から導入される予定となっており※4、DRSの対象となる飲料容器は、容量が50mL～3Lのペットボトル、スチール缶、アルミ缶（ウェールズではこれらに加えて同容量のガラス瓶も対象）とされている。ちなみに、DRSは、フィンランド、ノルウェー、ドイツで既に導入されており、DRSによる飲料容器の回収率は90%を超えている。※5
こうした取り組みは2035年までに一般廃棄物の65％をリサイクルし、埋め立てを廃棄物の10％までに抑制する目標である「サーキュラーエコノミーパッケージ：2020年7月公表」の一環である。本目標はEUのサーキュラーエコノミーパッケージの目標と同等である。
EUの取り組みに触れる必要があるだろう。EUは、2019年7月に「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令(EU)2019/904」を施行し、2021年までにストローやーカトラリーといった特定の使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する措置をとっている。また、2020年3月に策定された「新循環型経済行動計画 」では、リサイクルプラスチック材の含有量に関する必須要件を提案していくことや、生分解性プラスチック及びバイオプラスチックの適正な使用を担保する枠組みを構築していくことなどが示されており、EUは、グローバルレベルでサーキュラーエコノミーを先導することを明確に謳っている。前述の英国の動きはEU離脱後の整合を図った結果となっている。※6
ここで日本の状況にも触れよう。使い捨てプラスチック製品の削減に向けた日本の取り組みでは、2022年4月から「プラスチック資源循環法」※7が施行されているものの、「使い捨てプラスチック製品の使用の合理化を小売・サービス事業者に求める」といった内容に留まっており、本稿で紹介しているような利用禁止までは踏み込んでいない。このことから、使い捨てプラスチック製品の禁止やプラスチック廃棄物の削減に取り組む英国・EUと日本の政策には、温度差があることが伺える。2022年3月にケニアの首都ナイロビで開催された国連環境総会では、プラスチック汚染は地球規模の喫緊の課題であることが示されている。使い捨てプラスチック製品の禁止対象をさらに拡大していく英国やその他欧州各国の姿勢を、日本も見習っていくべきであるように思う。
参考資料
※1
※2
製品価格に一定額の預託金を上乗せして販売し、製品が使用後に返却された場合に預託金を返却する制度のこと。
※3
英国では、2024年４月から包装の拡大生産者責任が強化され、家庭で廃棄される包装材の処理費用の全額を生産者が負担することが予定されている。
※4
https://www.gov.uk/government/news/deposit-return-scheme-for-drinks-containers-moves-a-step-closer
※5
https://www.gov.uk/government/news/government-sets-out-plans-to-overhaul-waste-system
※6
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?qid=1583933814386&uri=COM:2020:98:FIN
※7