エネルギーヴェンデ(転換)の変遷と道筋:石炭火力発電の段階的廃止
エネルギーヴェンデの主要施策の一つ「石炭火力発電の段階的廃止」について説明する。
【政策方針】
政府の方針は、「パリ協定により策定されたGHG排出削減目標」を達成するために、2038年までに全ての石炭火力発電を廃止することである。
【石炭火力発電の変遷と段階的廃止への道筋】
石炭火力発電の段階的廃止の政策決定には、「自国が有するエネルギー資源からの脱却の是非」・「自国を支えてきた石炭産業への配慮」等の様々な議論が重ねられ、数年間に及ぶ時間を要した。2018年、幅広いステークホルダーからなる「石炭委員会」が、脱石炭を支持する7割以上の国民の声の後押しにも助けられ、廃止へ向けたロードマップを作成した。このロードマップ並びに2020年に制定された「石炭火力発電廃止法」に則り、2038年全ての石炭火力発電は廃止となる。
出典:”Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft e. V. (Stromerzeugung und –verbrauch in Deutschland)”他、各種資料より、B.A.U.M. Consult Japanにて作成
【石炭火力発電の段階的廃止における、無煙炭・褐炭発電所における発電容量の推移】
ドイツにおける石炭火力発電の燃料は、最も炭化度が高い「無煙炭」と、自国で産出される炭化度の低い「褐炭」である。
「石炭火力発電廃止法」は、2022年及び2030年における無煙炭及び褐炭発電所それぞれの発電容量を以下の通りと定め、2038年に全ての石炭火力発電所を停止することを謳っている。
・2022年現在の発電容量:[無煙炭発電所:15GW] [褐炭発電所:15GW]
・2030年時点の発電容量:[無煙炭発電所: 9GW] [褐炭発電所: 8GW]
・2038年:全ての石炭火力発電所を停止
出典:”石炭発電廃止法(KVBG)“よりB.A.U.M. Consult Japanにて作成
【石炭火力発電の段階的廃止の実現に向けた補償支援策】
政府は、石炭火力発電の段階的廃止により影響を受ける「地域」・「石炭火力発電事業者」・「鉱業従事者」に対する巨額の補償支援を行い、石炭地域における質の高い雇用を備えた持続可能な経済を創出する。
出典:”石炭地域構造強化法“よりB.A.U.M. Consult Japanにて作成