エネルギーヴェンデ(転換)の変遷と道筋:原子力発電の段階的廃止
エネルギーヴェンデの主要施策の一つである「原子力発電の段階的廃止」について説明する。
【政策方針】
政府は、「原子力災害」・「核拡散」・「再生可能エネルギーと比して高いコスト」・「将来世代にとって負の遺産となる核廃棄物」等のリスクを有する原子力発電を「過去のエネルギー」と宣言し、「原子力法」により段階的廃止を定めている。
【原子力発電の変遷と段階的廃止への道筋】
原子力発電の段階的廃止は、「1970年代の市民の反核運動」・「1980年代のチェルノブイリ事故」を経て、2002年に制定された「原子力法」により定められた。本法において「運転期間を32年とする」・「新規建設の禁止」等が定められ、運転期間に達した原子炉から順次廃止されることになった。
一方で、再生可能エネルギー拡大を図る当時の政府は、原子力発電を再生可能エネルギーへの移行過程における有力なエネルギー源とも捉えていた。従い、2010年の改正において、運転期間の延長が定められることになった。
しかし、改正直後の2011年3月「福島第一原子力発電所事故」が発生した。当時の首相メルケル氏は、1980年以前に運転を開始した7基の即時の停止及び故障により運転を停止していた1基の再稼働禁止を決断した。更に、同年8月に原子力法を改正し、残る原子力発電所について2022年末を期限とする各々の停止時期を定めた。尚、現在稼働している原子力発電所は3基である。
出典:各種資料を基に、B.A.U.M. Consult Japan にて作成
【連邦環境・自然保護・原子力安全省の見解:脱原子力を完了する為の12の項目】
連邦環境・自然保護・原子力安全省は、福島第一原子力発電所事故から10年経過した2021年3月11日、脱原子力発電を完了する為の12の項目を発表し、脱原子力に対する見解を公表している。
出典:”12 Punkte für die Vollendung des Atomausstiegs– die Position des Bundesumweltministeriums(BMUV)”より、B.A.U.M. Consult Japan にて作成