• 「Water Footprint:ウォーターフットプリント」はユーザーが製品を選択する際の「価値指標」の一つとなっている

 CO2の排出に関する企業の取り組みはカーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products : CFP)として、広く周知され、製品の製造単位に排出される二酸化炭素の量として、企業の脱炭素化の取り組みの成果として、企業プロモーションや製品の競争力の指標としても利用されています。
 では、企業が排出するのは二酸化炭素だけなのでしょうか?同様に水も企業が配慮すべき事項と皆さん認識されているはずです。

 もちろん、あらゆる環境負荷に対して企業は配慮せねばならいはずなのであるが、水利用は利用量がイメージしやすいことが手伝って、ネガティブな印象を与えやすいとして、企業は水の利用量を示したくないという意識があるかと思います。

 しかし、製品に利用する水利用量を透明化することで、企業の誠実性を内外に示すことで、企業の資質をバリューアップする動きも出てきています。特に欧州の食品メーカーではWater FootprintとCFPの双方をラベル表示している企業も出てきています。

出典:フィンランドの食品会社:Raisio plc社のウォーターフットプリントのラベル表示)

  • 水環境に及ぼす影響を明らかにする「Water Footprint:ウォーターフットプリント」

 ウォーターフットプリント(WF:Water Footprint)は、水を利用(消費)して行なわれている、あらゆる製品(農産物、水産物を含む)の材料の栽培や生産、製造や加工、輸送、流通、消費、廃棄そしてリサイクルまでの「製品のライフサイクル」を対象に、製品が及ぼす水環境の影響を定量的に算出することを指します。

 水環境への影響の大きさ、すなわちフットプリントの過多は、容積を示すm3で表します。

 ウォーターフットプリントの評価は、製品がどのように水資源に依存しているのか、また水環境に影響を与えているのか、その関係を理解すると同時に、企業の汚染や地域の水の枯渇といったリスクの評価に活用できるものです。

 地球温暖化に温室効果ガスを排出していることを評価する為に、製品のカーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products : CFP)という指標がありますが、同様に水環境において水をどのように利用(消費)しているのかを示すのがウォーターフットプリントです。

 弊社はウォーターフットプリントの算出とその数値を当該企業のサステナブル戦略に活かすコンサルティングを展開しております。

  • 「Water Footprint:ウォーターフットプリント」は何を対象とするのか?

 水資源を公平に使用するためのグローバルなプラットフォームであるWater Footprint Networkは、ウォーターフットプリントを以下の3つの種類に分類しています。また、Water Footprint ISO14046 にて国際規格化されています。

  • 地下水取水による地盤沈下

 国土交通省による地盤沈下の現状を紐解くと、地下水の過剰採取による地盤沈下については、関東平野南部では明治中期(1890 年代前半)から、大阪平野でも昭和初期(1930 年代中頃)から認められ、さらに、昭和30 年(1955 年)以降は全国各地に拡大しました。
 地盤沈下は、地下水の採取規制や表流水への水源転換などの措置を講じることによって、近年沈静化の傾向にあるとされています。

図 代表的地域の地盤沈下の経年変化

出典:「 平成29年度 全国の地盤沈下地域の概況」環境省)

  • 日本の水は農業で約7割を利用

 国土交通省 水管理・国土保全局水資源部による令和5年発表の「日本の水資源の現況」によれば、令和2年(2020 年)における全国の水利用量(取水量ベース。以下同じ。)は、合計で約797 億㎥/年であり、用途別にみると、生活用水と工業用水の合計である都市用水が約265億㎥/年、農業用水が約532億㎥/年となっています。農業用水の利用量が全体の約7割(66%)を占めています。

図 日本の水利用量の推移

出典:令和5年「日本の水資源の現況」 国土交通省 水管理・国土保全局水資源部

  • 渇水の影響は1995年以降少なくなっている

 昭和31年から令和2年(1956年から2020年)までの65年間の降水量の実測値によると、渇水年水資源賦存量は過去から一旦減少し、回復傾向にありますが、昭和40年以降では、昭和42年(1967年)、48年(1973年)、53年(1978年)、59年(1984年)、60 年(1985 年)、平成6年(1994 年)で特に多くの地区で渇水による影響が生じたという結果となっています。

図 各種用水の渇水影響地区数

出典:令和5年「日本の水資源の現況」 国土交通省 水管理・国土保全局水資源部