1. 概要と背景
循環型社会形成推進基本法(2000年制定・2001年施行)は、大量生産・大量廃棄型の経済から、限られた資源を繰り返し使い、最終的に捨てる量を最小化する社会へ転換するための“総合ルール”である。環境基本法の下に位置し、廃棄物処理法や容器包装リサイクル法など個別法を束ねるハブの役割を果たす。
2. 制定の経緯(簡易年表)
年月 | 出来事 | 意義 |
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1999年10月 | 与党が「循環型社会元年」を宣言 | 基本法立案の政治合意 |
2000年5月 | 国会で可決 | 法律として成立 |
2001年1月 | 施行 | 国・自治体などに行動義務が発生 |
3. 目的
- 資源のムダを抑える
- 再使用・リサイクルを増やす
- どうしても残るゴミは安全に処分する
- これらを通じて環境負荷をできるだけ小さくする。
4. 基本理念(3つの優先順位+2つの視点)
- 発生抑制(リデュース)
- 再使用・再生利用(リユース/リサイクル)
- 適正処分
- 国際協調
- 広域で効率的な資源循環
5. 主体ごとの役割
主体 | 具体的な取り組み例 |
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国 | 基本計画づくり、税制・補助金、技術開発支援 |
自治体 | 分別収集・リサイクル施設の整備、住民啓発 |
事業者 | 発生抑制設計(省資源設計)、リサイクル原料の利用拡大 |
国民 | 分別排出、リサイクル製品の選択、リユース品の活用 |
6. 国の主な施策
- 循環型社会形成推進基本計画(5年ごと改定。最新は2024年策定の第5次計画)
- グリーン税制やリサイクル料金制度など経済的インセンティブ
- デジタル技術によるトレーサビリティ(製品パスポート等)
- アジア太平洋3Rフォーラムなど国際連携
7. 代表的なKPI(第5次計画例)
指標 | 2030年度目標 | 2020年度実績(参考) |
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資源生産性(GDP ÷ 資源投入量) | 420千円/トン | 約380千円/トン |
循環利用率(リサイクル等の割合) | 25% | 約19.5% |
最終処分量 | 1,000万トン以下 | 約1,300万トン |
8. 個別リサイクル法との関係
家電・自動車・容器包装などの個別リサイクル法は、対象製品を細かく規定している。一方、基本法は「3Rを社会全体でどう進めるか」を示す“総合方針”であり、個別法の上位に立って全体の方向性を決める。
9. 改正・運用のポイント
- 2006年以降:KPIを設定し進捗を数値管理
- 2018年:SDGsと循環経済の概念を盛り込み、国際潮流に対応
- 2024年:デジタルパスポートやリユースビジネス支援など、新ビジネスとの連携を強化