【愛知県・蒲郡市】サーキュラーシティ蒲郡
愛知県蒲郡市は、持続可能な社会の実現に向けて「サーキュラーエコノミー」の理念を地域づくりに取り入れることに積極的に取り組んでいる。この取り組みは、環境負荷の低減を図りつつ、地域経済の活性化、住民のウェルビーイング(Well-being)の向上を目指している。サーキュラーエコノミーを地域の中核に据えた「サーキュラーシティ」の実現に向け、蒲郡市は具体的なアクションプランを策定し、実行に移している。本稿では、蒲郡市のサーキュラーエコノミーに関する方針、施策、実施体制、これまでの成果、今後の展望について紹介する。
1. サーキュラーシティ蒲郡のビジョンと基本方針
蒲郡市は、サーキュラーエコノミー推進の中で、以下のようなビジョンと指針を掲げている。
1.1 ビジョン「つながる 交わる 広がる サーキュラシティ蒲郡」
蒲郡市は、サーキュラーエコノミーを取り入れた「サーキュラーシティ」の実現を目指している。このビジョンには、資源の循環、環境負荷の低減、地域経済の強化、そして住民の生活の質の向上が含まれている。具体的には、市内で生産される資源を無駄なく循環させ、廃棄物の削減と再利用を進めることが目的である。
1.2 サーキュラーシティの指針
蒲郡市に関わるすべての人々のウェルビーイングの実現のために、下記の3つの価値を各重点分野において創出することを目指す。
- 経済的価値:収益向上、新事業・サービスの創出など
- 社会的価値:関わる市民の社会的価値の向上(つながりの増加、健康度の増加)、地域への愛着の増加など
- 環境的価値:汚染の減少、廃棄の減少、自然の再生など
2. 重点分野とアクションプラン
蒲郡市の「サーキュラーシティ推進」には、7つの重点分野が設定されており、それぞれに対して具体的なアクションプランが策定されている(図を参照)。
図 サーキュラーシティ蒲郡 7つの重点分野

出典: サーキュラーシティ蒲郡のHPより引用
2.1 教育
- 目的:循環型社会の重要性を市民、特に次世代に伝えるため、学校教育や地域のワークショップを通じて意識啓発を行う。
- 施策例:学校での循環型経済に関する授業やワークショップの実施、リサイクル活動の参加推進。
2.2 消費
- 目的:持続可能な消費行動を促進し、過剰な消費を抑制する。
- 施策例:エコ商品やリサイクル商品を購入する市民へのインセンティブ提供、地元産品の利用推進。
2.3 健康
- 目的:地域住民のウェルビーイングを促進し、健康的なライフスタイルをサポートする。
- 施策例:健康維持に役立つ地元農産物の推奨、エコフレンドリーな健康関連イベントの開催。
2.4 食
- 目的:地産地消の推進、フードロスの削減。
- 施策例:地元農産物を使用したレストランの紹介、食品廃棄物のリサイクルと再利用促進。
2.5 観光
- 目的:エコツーリズムを推進し、地域資源を持続可能な形で活用する。
- 施策例:エコツーリズムのプランニングと地域資源を活かした観光プロモーション。
2.6 交通
- 目的:低炭素交通システムの導入。
- 施策例:公共交通機関の利用促進、EV(電気自動車)シェアリングシステムの拡充。
2.7 ものづくり
- 目的:リサイクル・再利用を重視した製造業の支援。
- 施策例:循環型素材を使用した製品開発を推進するための補助金や支援策の提供。
3. 実施体制とステークホルダーとの連携
3.1 サーキュラーシティ推進室
蒲郡市は、サーキュラーエコノミーの実現に向けた中心的な機関として企画政策課の中に「サーキュラーシティ推進室」を設置している。サーキュラーシティ推進室は、行政の枠を超えて、地域企業、NPO、教育機関と連携しながら、政策の実行を担当している。
3.2 官民連携
蒲郡市は、官民連携を強化するために、地域企業や住民と協力して、サーキュラーシティの実現を支援している。また、地元の企業には、リサイクルや廃棄物削減技術の導入支援を行い、市民参加型の取り組みを進めています。
3.3 市民参加
市民を巻き込んだ活動として、地域のワークショップやイベントが頻繁に開催され、市民の意識啓発や参加を促進している。また、地域のイベントにおいて、サーキュラーエコノミーに関する情報提供や活動報告も行われている。
4. 成果と今後の展望
4.1 これまでの成果
- 地域リサイクルプログラムの拡充:市内でのリサイクル率が改善され、特に家庭ごみの分別が進んでいる。
- 地元産品の消費促進:地元農産物を活用した観光プランやフードイベントが成功し、地域経済に貢献している。
- 住民参加型のイベント実施:市民の参加によって、地域の循環型社会への理解が深まった。
4.2 今後の展望
- 他自治体との連携強化:他の自治体とも連携し、サーキュラーシティ蒲郡のモデルケースとしての役割を果たす予定。
- 企業のさらなる参加促進:循環型経済の実現に向け、企業の積極的な参加を促進し、地域資源を最大限に活用する企業文化を育成。
- 新技術の導入:リサイクル技術や低炭素交通システムなどの技術革新を取り入れ、より効率的な資源循環を目指す。