(文責: 青野 雅和)

日本政府におけるデータセンターに対する政策は諸処在り、安全保障、DX化など多様な視点で議論が交わされているが、本稿では環境面から紹介したい。

データセンター推進に脱炭素化の視点を付加している日本

 2025年6月13日、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定された。この計画内では、AI-フレンドリーな環境の整備(制度、データ、インフラ)の項目の中に「AI向け計算資源・データセンターの整備の加速」として説明されている。データセンター建設を加速させる一方で、対策も必要であるとの認識で、電力の有効利用を意図した政策も進んでいる。これは、脱炭素化を進める中で新規に建設されるデータセンターが大量のエネルギーを消費することを見越したものである。具体的には、2025年2月18日に閣議決定された「GX2040ビジョン」が該当する。

 「GX2040ビジョン」において、内閣官房は「GX産業構造の実現に向けたGX産業立地ワーキンググループ」を立ち上げ、GX産業立地政策の具体化を進め、①コンビナート等再生型(GX新事業創出)、②データセンター集積型、③脱炭素電源活用型の3類型に整理され、データセンターは上述②データセンター集積型において「電力系統等のインフラに配慮したGX型のデータセンターの適正立地を目指す取組・計画」を設定している。そして、上述の3類型に対して、規制・制度改革と支援策を一体で措置する「GX戦略地域」制度を創設することとし、2025年2月18日から、自治体及び事業者等からの提案募集を開始している。説明が長くなったが、要は脱炭素型データセンターを推進していくのである。

データセンターにおける水資源の利用

 政府はこのようにデータセンターの建設において、積極的に電力の有効利用を推進しているのであるが、水の有効利用については政策を設けていない。データセンターでは、サーバーなどの機器が稼働する際に発生する大量の熱が出る。コンテナ型のデータセンターでは40度近い環境を冷却するために20度の空気が必要となる。従い、機器の性能低下や故障を防ぐための冷却が求められる。各データセンターでは空調設備において、空冷と水冷を、また、最近では絶縁性(電気を通さない性質)の液体にサーバー本体を丸ごと浸し、チップを直接冷媒に触れさせることで効果的にサーバーを冷却する「液浸冷却技術」の導入を検討しているデータセンターもあるが未だ数例であり、殆どのデータセンターで空冷と水冷の空調を適用している。空冷技術は水を殆ど利用しないが、電力消費が大きく、水冷技術は水での熱交換を利用することで電力消費を軽減させる技術になる。日本では空冷技術を活用しているデータセンターが多く、今後は水冷技術を検討していくデータセンターが増えていくであろう。ここで問題となるのが、地域の水資源を大量に使う恐れと、他セクター及び地域住民との水資源の共存である。

データセンターの増加は地域の水資源利用に不安を与える可能性もある

 2023年にGoogle社が建設したデータセンターの水消費を巡って、オレゴン州ダレス市、Google社、また両組織が締結した公的記録の公表を求めた地元地方紙のオレゴニアン/オレゴンライブとの間で法廷闘争が行われている[i]。水使用量は公的記録であると判断し、ワスコ郡地方検事がダレス市に対しにその情報を提供するよう命じ、結果両社が和解し、データを公表している。その結果、Google社のデータセンターでは、2021年に3億5,500万ガロン(約1億6,000万リットル)の水を消費しており、この量はオレゴン州ダレス市全体の29%に相当することが判明した。ダレス市では数年続いた干ばつに住民の不安の声が拡大し、長期的な水供給に関する懸念があったことがこの訴訟の背景にある。米国では、データセンターのサーバーの直接的なウォーターフットプリントの5分の1は、中程度から高度の水ストレスを抱える流域から取水されている。また、データセンターの半分近くは、電力の全部または一部を水ストレス地域に所在する発電所に頼っているとの意見もある。

 米国と同じ事象が日本でも引き起こされるかもしれない。データセンターを水冷にすることで、日本でも地域住民の不安が想定されることから、データセンターの建設には設計時に水消費量を公表することが必要であろう。

 図1に Mordor Intelligence™ Industry Reportsが公表している日本のデータセンターにおける水消費量の水位予測を示した。日本におけるDCの水消費量は、2024年には約835.9億リットル(8359万トン)に達し、2029年には年平均成長率6.5%以上で約1154.2億リットル(1億1542万トン)に達すると予測されている。

図1 日本におけるDCの水消費量の推移予測 (単位:10億リットル)

出典:Mordor Intelligence™ Industry Reports

水資源は有限であることを認識する必要がある

 我が国は雨に恵まれた国であるが、1人1人が使える水は実は少ないことをご存じであろうか、日本は国土が狭い割には人口が多く、地形が急峻であるため、降った雨は陸地から海域に流れ出てしまう。また、生活の向上に伴い水の使用量は増えていることも要因である。

 国土交通省水資源部編「平成16年版 日本の水資源」によると、日本は、降水量は多いものの水資源には恵まれていない。図2を参照すると驚かれると思うが、人口当たりの水資源で比較すると、関東は北アフリカや中東と同程度の水資源賦存量である。

図2 世界の国別及び日本の地域別人口一人当たり水資源賦存量

出典:国連食糧農業機関{AQUASTAT}のデータを基に国土交通省水資源部作成

 この水資源賦存量について少し説明させていただく。聞きなれない言葉と思う読者もいらっしゃるであろう。一般財団法人日本ダム協会[ii]によると、水資源賦存量とは「水資源として、理論上人間が最大限利用可能な水の量で、単に水資源量とも言います。降水量から蒸発散によって失われる量を引くことによって計算されます。」と記載されている。日本人の感覚では、水資源賦存量は気にしなくても良いという御仁が多いのではなかろうか。「梅雨もあるし、台風も来ることで、雨が多い、多くの河川が流れている。湖や池も多い。だから水資源賦存量という「制限」があることを気にせず利用しようではないか。」との意識で発言される企業、自治体関係者は実際に多い。地域の水資源賦存量は有限であることは理解していながら、自社で水資源をどの程度利用可能なのか、その「リミッター」がわからないことが、前述の短絡的且つ楽天的思考に繋がってしまう一因であると筆者は考える。「リミッター」があれば、誰もそのようなことは言えなくなるからである。

 地域の水資源は、閉鎖系のエコシステムであり、ある時間軸の中では無限ではなく有限なのである。

降雨時期と降雨の変化

 日本の渇水は、降雨量が多いにもかかわらず、河川の勾配が急で海へすぐに流れ出てしまう地理的特徴や、ダムの老朽化や土砂堆積による貯水能力の低下などが原因と考えられる。近年では、気候変動による降水の季節的な偏りが注目される。今年の空梅雨と秋雨前線の居座りを感じた読者も多いのではなかろうか。表3に気象庁発表の「2025年の各地方の梅雨入り、梅雨明けと梅雨の時期の降水量の地域平均平年比」を示す。

表3 2025年の各地方の梅雨入り、梅雨明けと梅雨の時期の降水量の地域平均平年比

出典:気象庁 2025年(令和7年)の梅雨入りと梅雨明け(確定値)[iii]

 例えば、関東甲信では、梅雨の入りが平年より15日ほど早く、梅雨の明けは21日程度早まるという結果となった。また梅雨の期間も平年では42日であるにもかかわらず、今年は36日と6日短く、降雨量も73%程度となった。梅雨を実感しないほど晴れ間が続いたと感じた読者も多かったのではなかろうか。東北南部地方は平年比37%、東北北部地方で49%、北陸地方で50%と非常に低い降水量となっている。こうした梅雨の時期のずれと降雨量の少なさを来年以降も実感していくこととなるのであろうか。

 田植えの時期がずれると、収穫時期もずれる。降雨のずれを現実視し、農作物の栽培時期の開始をずらすことが現実となってきていると思料する。加えて、日本での雨の降り方は、「降雨時間が短く、降雨量は多い」という短時間に大雨が降るという傾向に移っていることを実感する。気候変動による高温により、多くの水が水蒸気となり、大量の雨を一気に降らす。降雨への対応検討は、気候変動対応対策と同義になっているのかもしれない。

渇水リスクの増加

 2025年の渇水は、夏に顕著に現れた。前述の「空梅雨」が原因と推察されるが、新潟県上越市や兵庫県加古川市で節水要請や取水制限が実施されるなど、記録的な渇水が発生したことを読者も記憶されているであろう。また、多くのダムで貯水量が低下し、取水制限が検討された。弊社で整理した各地域の渇水の事象を表4に示す。

表4 2025年の主な渇水事象

出典:自治体の公表情報から弊社整理

 こうした渇水の事象は気候変動の影響が疑われる近年において増加していると推察される。図5に国土交通省が整理している「過去30年の渇水により上下水道の遮断が生じた地域の事象」を示す。四国での渇水が生じていることは毎年のようにメディアで報じられているが、埼玉、長野、愛知などでも渇水が頻繁に生じていることが認められる。日本一大きな湖である琵琶湖でも取水制限が行われたこともある。1994年には琵琶湖の水位が約123センチまで下がり、大阪でも取水制限が行われ、 2023年秋には、雨量不足で琵琶湖の水位が低下し、2024年1月4日には過去最低(マイナス78センチ)となった。日本における渇水リスクは、今後増えることも意識せねばならない。

図5 1993 年から2022 年の30年間で渇水による上水道の減断が発生した地域

出典:国土交通省水資源部調べ

欧州ではデータセンターの環境基準を整備

 欧州では、欧州委員会が「Energy Efficiency Directive」でデータセンターの効率改善に向けた取り組みを推進している。同司令では、欧州自国内に立地する500kW以上のデータセンター所有者泳ぎ運営者に対し、エネルギー使用量や水使用量などの資源の利用効率の実績について開示を求めている。図6に経済産業省が整理している情報を引用する。

図6 Energy Efficiency Directiveの概要

出典:経済産業省 

 また、欧州では、100 社を超えるデータセンター事業者と業界団体が欧州グリーンディールに取り組んでおり、データセンター事業者を代表する業界団体(Pact Associations)と、欧州連合(EU)域内でデータセンターを所有または運営する企業(Pact Operators)が気候法で定められた野心的な温室効果ガス削減目標を達成するとともに、テクノロジーとデジタル化を活用して、データセンターが欧州の持続可能な未来に不可欠な要素となるよう、データセンター事業者と業界団体は、2030 年までにデータセンターを気候中立にすることに合意(署名)している。欧州には欧州データセンター協会The European Data Centre Association (EUDCA)という団体があり、気候中立データセンター協定(CNDCP:Climate Neutral Data Centre Pact)を通じて自主規制目標値を公表している。その主要項目を以下に示す。

  1. PUE(Power Usage Effectiveness:電力利用効率「データセンターの総消費電力 ÷ IT機器の消費電力)
  2. REF(Renewable Energy Factor:データセンターの再生可能エネルギー利用率)
  3. CUE(Carbon Usage Effectiveness:炭素利用効率「データセンターの総二酸化炭素排出量÷ IT機器の消費電力」)
  4. WUE(Water Usage Effectiveness:水利用効率「データセンターの総消費水量 ÷ IT機器の消費電力」) 

上述のWUEであるが、2025年1月1日までに水ストレス地域ではフル稼働時に最大水使用効率性 WUE=0.4 L/kWh を満たすように設計することを公約している。 また、既存のDCについては2040年末までに、冷却システムを交換する際、CNDCPの定めるWUE=0.4 L/kWhを満たさなければならない。

米国の動き:アマゾンはAIに水資源が重要であることを示している

 米国では、欧州のような業界基準は無いものの、前述のGoogleのデータセンターによる訴訟を回避するため、ハイパースケーラーは上記のWUEを自主的に公表しているデータセンター運営者が多い。

 2025年9月25日、アマゾンは水質改善と水資源管理の普及啓発を推進する国際的NPOである世界水環境連盟(WEF:Water Environment Federation[iv])、ペンシルベニア大学ウォーターセンター(WCP:The Water Center at Penn)、および上下水事業者の世界的なネットワークであるLeading Utilities of the World(LUOW)の4社で「Water-AI Nexus™ Center of Excellence[v]」の設立を発表した。同ネットワークは、「Water for AI(AIインフラにおける持続可能な水利用の実現)」と、「AI for Water(AIを活用した水資源課題の解決)」という2つの目標を掲げている(図7参照)。

図7 Water-AI Nexus™ Center of Excellenceのミッション

出典:Water-AI Nexus™ Center of Excellence HP

 アマゾンはAIの活用に水資源が重要であり、データセンターやAIを活用する顧客及び一般ユーザーに対して、水資源の利用を企業責任として取り組んでいくことを示しているわけである。

ブラジル

 ブラジルでもデータセンター向けの政が交付されている。2025年9月18日にDC事業奨励特別プログラム(Redata:Regime Especial de Tributação para Serviços de Data Centers;Special Taxation Regime for Datacenter Services)が交付された。ブラジルでは欧州と同じく、WUEを基準として用いている。

施行期間:2026年1月1日から2030年12月31日までの5年間

税優遇の適用を受けるための主な条件:

  1. データ処理・保管能力の最低10%を国内市場向けに提供すること。
  2. 電子部品やIT・通信機器購入総額の2%相当額を研究開発に拠出すること。
  3. クリーンまたは再生可能エネルギー由来の電力のみを使用すること。
  4. 水使用効率(WUE)を、1キロワット時(kWh)あたり0.05リットル以下に抑えること

 

中国のデータセンター建設基準

 中国は水利用効率(WUE)に関する国家基準を制定していないが、地方自治体は独自の基準の導入を開始している。2022年に長江流域の干ばつで水力発電が停止した経験から、データセンター産業に「Water NeutralもしくはWater Positive」を目指す様、促している。なかでも、上海市はデータセンター建設ガイドラインを2021年に改訂し、600kWを超える新規データセンタープロジェクトに対してWUEを報告することを義務化している。なお、ガイドラインでは1年目は1.6リットル/kWh以下 、2年目以降は1.4リットル/kWh以下のWUEを推奨している。

 中国のデータセンター運営者では、Baiduと小米(シャオミ)は2021年にそれぞれ23%と53%の水消費量が増加。Tencentは2022年にそれぞれ31%と32%の水消費量と水強度(売上高あたりの水消費量)が増加していると公表しており、Baidu, Alibaba, Tencentなどの大手データセンター運営者は自主的に水効率の向上や地域水環境への貢献策を打ち出している。

日本のデータセンター事業者の環境規制の動き

 過去に日本データセンターが「環境に優しいDC認定制度」としてガイドラインを作成していたが、電力の効率利用を重視しており、その他、再生可能エネルギーの活用、運用・管理体制、保守・点検計画、冷却技術の最適化などが適切に管理されているかが問われることとが挙げられていた。しかしながらWUEの基準は記載されていない。また、同制度は平成28年に終了している。

 環境省は、データセンターによる再エネ利活用の促進に関するアニュアルレポートを2025年3月に公表している。また、経済産業省は、省エネ法に基づく省令や告示を2025年度内にも改正し、データセンターに対するエネルギー効率の基準を設け、罰則を適用する方針を「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 工場等判断基準ワーキンググループ(令和7年度第2回)」で議論している。概要を以下に示す。

対象:2029年度以降に新設されるデータセンター
 エネルギー使用量が原油換算1,500kl以上のデータセンター事業者で、データセンターのサーバ室面積が300m2以上もしくは年度のエネルギー使用量、原油換算で1,500kl以上であること

基準:稼働2年後の電力使用効率(PUE)を「1.3以下」にすること

罰則:基準を達成できない場合、国はデータセンター事業者に対して、当該データセンターが基準を達成するための合理化計画の作成・提出指示の提出を求め、従わなければ改善命令が出される。それでも対応しない場合は、省エネ・非化石転換法第百七十四条に基づく罰金:100万円以下の罰金が科される可能性を検討。

日本におけるデータセンターの課題

 欧州、米国、中国、ブラジルでは既にデータセンターの新規建設において、エネルギー効率のみで評価することはしておらず、水資源の利用効率も重要視している中、日本においては、水資源の評価が行われていない。水資源の適正利用と評価の未整備が、世界と日本における大きな違いである。各国が抱える事業環境を考慮するべき中で、水資源に関して把握しないと、地域住民の不安を煽ることとなりかねない。例えばデータセンターが集積していることで有名な印西市には、約20棟のデータセンターが立地している。約20棟のデータセンターでどれだけの水が消費されているのであろうか。参考に、図8に弊社が整理したデータセンターの事業環境の課題と評価(世界と日本)を示す。

図8 データセンターの事業環境の課題と評価(世界と日本)

出典;B.A.U.M. Consult Japan作成

 また、データセンター事業者側の事業リスクとして渇水時の取水制限を認識しておく必要がある。河川の流水を占用する権利である「水利権」は、先発の水利権が優先され、許可された水利権の水が安定的に継続される。この基本原則に基づき、河川管理者が決定するが、具体的には、飲料水や生活用水、公共用水の確保が最優先され、次いで農業用水、工業用水、発電用水などが順位付けされる。また一部の自治体ではデータセンターの利用申請は雑配水としての登録となり、工業用水と水質は同じであるものの、優先順位が劣後する。そのため、渇水時の取水制限においては、もっとも早い段階で制限対象となるため、データセンター側としての事業リスクがあるのである。

 いずれにしても、データセンターの水資源に対する基準作りは整備しておく必要があると考える。先進国において、データセンター基準が無いままデータセンター建設を推進している状況を改善していく必要はあるのではなかろうか。

引用

[i]https://www.oregonlive.com/silicon-forest/2021/11/the-dalles-sues-to-keep-googles-water-use-a-secret.html

[ii] http://damnet.or.jp/

[iii] chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/seasonal/202508/tsuyu2025.pdf

[iv] https://www.wef.org/

[v] https://water-ai-nexus.org/