3月1日に、ドイツ産業連盟(BDI ; Federation of German Industries )のエネルギー・気候政策担当部長かつGJETC(The German Japanese Energy Transition Council)の評議員を務める Carsten Rolle 博士が弊社にお越しいただき、ドイツ及び欧州におけるサスティナビリティ経営・気候変動対策に関してお話しいただきました。以下にご紹介いたします。
Q. (青野)
欧州の企業がサスティナビリティ経営に取り組む要因やメリットとしては、何が考えられますか?
A. (Rolle 博士)
ドイツ国内においては、日本と同様にサスティナビリティ経営の重要性が過去数年間で急激に高まってきています。
最近の調査結果(例:ベルテルスマン財団 2021 ※1)によると、ドイツ国内の企業がサスティナビリティ経営を実践する主な動機としては、「顧客ニーズ」及び「役員会の内部要件」を挙げる企業が多いことが判明しています。サスティナビリティ経営はリスクマネジメントの一環であり、顧客・サプライヤー・ステークホルダーに対する重要なメッセージとなります。
また、「政治的な規制」が第3の要因として挙げられていますが、今後より透明性が求められるようになれば、バリューチェーン全体に影響が及び、情報開示も含めたより一層の企業努力を促すことになると予想しています。
Q. (青野)
欧州でサステナビリティに関する規制はどのように発展していくのでしょうか?
A. (Rolle 博士)
2022年12月、EUは新しい「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」を発表しました。これにより、既存のルールがより鮮明になり、今後数年間で企業の対象が拡大され、2024年に大企業から始まり、2028年までの数年間で中小企業や外国企業も段階的に報告を義務化されることになります。また、EUタクソノミーや金融セクターの要求事項が整備されてきていることもあり、中小企業と大企業のCSRにおける差は時間経過とともに縮小していくと推測されます。
※1:https://www.sdgindex.org/reports/sustainable-development-report-2021/
Q. (青野)
Roll博士のご出身である、ドイツの中小企業の方々は、サステナビリティ経営を推進していると感じていらっしゃいますか?
A. (Rolle 博士)
ますます多くの中小企業が、顧客にアプローチすることが必要になっています。ドイツでは何がそれを推進しているのかを確認することでしょう。規制なのか、それとも顧客のニーズなのか、少なくとも私が聞いたところでは、規制の前に、他の顧客がそれを求めていることが主な要因です。だから、彼らはサスティナビリティ経営を導入しようとするのです。また、もちろん経営者の判断で、自分の会社をこういう風に位置づけたいということで、必要以上に早期に導入することもあります。
Q. (青野)
気候変動対策についてお聞きします。ドイツの産業界は、気候変動対策についてどのように考えているのでしょうか? ドイツ産業連盟(Roll 博士はエネルギー・気候政策担当部長を務めいてる)では気候変動に対応する戦略が存在するのでしょうか?
A. (Rolle 博士)
6年前、私は2050年までのドイツの気候パスウェイに関する最初の研究プロジェクトを立ち上げ、最も効率的な技術構成と必要な投資について説明しました。更に、2030年の気候変動目標を達成するために必要な8600億円の追加投資を開始するための具体的な政策ステップを解説する研究を2022年に追加的に実施しました。これはドイツ産業連盟の会員団体や企業との長い議論となりましたが、非常に有益なものでした。なぜなら、技術・イノベーション・ビジネスケースに関する知識は企業の中にあり、それを集約して、今後の最適な戦略を見出さなければならないからです。ドイツの政治家やNGOは、その結論を理解することに非常に興味を持っており、私はこのようなプロセスを社内の戦略構築にも強く推奨します。
Q. (青野)
その道筋の鍵となる成果と課題は何でしょうか?
A. (Rolle 博士)
電化を加速させるための再生可能エネルギーの導入拡大と、水素および水素ベースの製品のニーズが、重要な要素です。更に、エネルギー効率の大幅な向上、CCSの利用、サーキュラーエコノミーの推進など、その他の要素も必要です。
主な課題の1つは、新たなインフラを実現するための認可手続きに時間を要することです。また、グリーンエネルギーのOPEXコストがしばらく高くなるため、炭素価格、インフラ計画、一部の地域に対する限定的な財政支援など、いくつかの政策的な支援も必要になります。
Rolle 博士(左から2番目)、お越し頂きまして誠に有難うございました!