IEAが再生可能エネルギー市場報告書を発表                                                            ~2023年以降の再エネ導入容量は世界各国の今後の政策が鍵となる~

(文責:青木 翔太)

 2022年5月11日、国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)は「再生可能エネルギー市場報告」を発表した。※1報告では2022年における世界の再生可能エネルギーの導入量は、2021年の294.2GWから8.4%増加し、319.0GWになると予想されている。これは、ドイツ全体の年間電力需要、もしくは欧州連合(EU)の天然ガス火力発電の総発電量に匹敵する。

 同報告によれば、2022年の電源全体の59.1%を太陽光発電が占めており、導入容量は前年比から24.8%増加の188.6GWと示されている。中でも、大規模公共事業による太陽光発電は117.5GWとなり、前年比で48.5%の増加が見込まれている。次に高いシェアを占めているのは風力発電であり全体の28.0%を占める。風力発電は前年比から5.2%減少の89.4GWである。陸上風力発電はシェアを拡大するものの、洋上風力発電は前年比で40.6%減少するとされている。この減少は中国で国家補助金の廃止による影響と見られている。

 また、国・地域別にみると、中国、欧州連合(EU)、米国での設備容量の多さが目立つ。中国は前年比から10.1%増加の148.4GWとなり、世界全体の46.5%を占める。中国政府は太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの導入を推進し、2030年までに太陽光および風力の導入を1.200GWとする目標を掲げている。EUも前年比から14.2%増加の41.7GWを示している。一方、米国では、再生可能エネルギー導入にむけた新制度の承認の遅れや太陽電池モジュールの生産力不足を背景として、前年比から12.6%減少の31.8GWとなる見込みだ。

 さて来年に至る動向であるがIEAは、2023年における再生可能エネルギーの導入量が2022年と同程度になると予測している。加えて2023年以降の再生可能エネルギーの見通しは、欧州をはじめとする各国が今後6ヵ月間でさらなる政策を導入・実施するかどうかに大きく依存するとの見解も示している。

 現在、ロシアのウクライナへの侵攻を受けて、世界的にエネルギー安全保障上の危機が生じている状況は読者も周知の通りである。ロシアの化石燃料への依存を脱却する「REPowerEU」計画を掲げている欧州連合(EU)は、同計画における新たな方針を2022年5月18日に公表している。※2特に、再生可能エネルギーの大規模な拡大に向けて、EUは許認可手続きの迅速化や特定の建物への太陽光パネルの設置を義務付ける措置などを提案し、再生可能エネルギーの導入目標を2030年までに従来目標の40%から45%へ引き上げることを明らかにした。また、EUは「REPowerEU」計画の目標達成に向けて、2027年までに2,100億ユーロ(約28兆円)の追加投資を行う方針だ。

 このようなEUの計画を皮切りに、各国の再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取組が推進され、IEAが予測した2023年以降の導入容量を引き上げることができるだろうか。なお、「REPowerEU」計画に関しては弊社NEWSによる4/11更新の【「REPowerEU」計画: ロシアからの天然ガスを含む化石燃料への依存解消に舵を切るEU】を参照されたい。※3

参考資料

※1 International Energy Agency

https://www.iea.org/news/renewable-power-is-set-to-break-another-global-record-in-2022-despite-headwinds-from-higher-costs-and-supply-chain-bottlenecks

※2 European Commission

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_22_3131

※3 弊社NEWS【「REPowerEU」計画: ロシアからの天然ガスを含む化石燃料への依存解消に舵を切るEU】

「REPowerEU」計画: ロシアからの天然ガスを含む化石燃料への依存解消に舵を切るEU

(文責:青木 翔太)  EUはロシアのウクライナへの侵攻を踏まえて、2030年までにロシアの化石燃料への依存を脱却する「REPowerEU」計画を2022年3月8日に発表した。※1同資料…