ドイツは、カーボンニュートラルに向けて地域経済政策の再編へ                           ~日本と同様に脱炭素化事業における資金面の整備に向けて情報提供を求める~

(文責:青木 翔太)

 ドイツでは地域経済政策として、地域経済構造改革共同事業( Gemeinschaftsaufgabe Verbesserung der regionalen Wirtschaftsstruktur 略称GRW )が存在する。これは、政府による投資基金を通じて、経済的に弱い地域の投資を促進し、地域の収入と雇用を創出することを目的とした資金提供プログラムを指す。具体的な投資対象地域に関しては、特定の地域における企業規模別の資金調達率を示した「GRW助成マップ」を2021年に再定義しており、投資期間は2022年1月1日から2027年12月31日までとなっている。(詳細は図1を参照)

図1. 2027年末までの地域別GRW資金調達率

出所:ドイツ経済気候保護省の資料を基にBCJ作成

 このGRWであるが、2022年2月22日に以下に挙げる再編を発表した。※1

・GRWの再編に向けて公的協議を開始する。
・GRWにおける今後の資金は、カーボンニュートラルを念頭に置いた経済への移行に焦点があてる。
・GRWに関心のあるすべての企業、自治体、協会、労働組合、その他の組織が、GRWの再編にむけた実践的な経験やアイデアを提供することができる。 (2022年3月31日迄)
・提供された情報は、連邦政府と州政府によるGRWの再編計画の作業に反映される。

 さて、ここで日本におけるカーボンニュートラルを念頭においた経済の実現に向けた投資政策にも目を向けてみよう。2022年2月8日、「地球温暖化対策の推進に関する法律」の一部を改正する法律案が閣議決定された。この改正案では、200億円の産業投資を活用した新たな出資制度を通じて、脱炭素事業に民間資金を呼び込む資金支援をするための法的基盤を構築するとともに、「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」により、国から地方公共団体への財政支援の努力を義務づけた。
 本法案に伴い、環境省は、「前例に乏しく投融資の判断が難しい、認知度が低く関係者の理解が得られにくい等の理由から資金調達が難しい脱炭素化に資する事業に対して、より一層の民間資金の呼び込みが必要となる」として、2021年12月24日に「株式会社脱炭素化支援機構」の創設し、資金供給等の支援を行うことを公表した。脱炭素化支援機構の構想概要では、出資、メザニンファイナンス※2、債務保証等による資金供給メニューが想定されている。さらに環境省は、2022年2月8日から、会社設立後の実行的な運営の準備の一つとして、脱炭素化支援機構からの資金供給等のニーズに関する情報を収集している。(詳細は弊社NEWSによる3/2更新の河北の「脱炭素化の早期実現へ向けて、環境省が(仮称)株式会社脱炭素化支援機構を設立準備中」を参照されたい※3

 此度の紹介のように、ドイツでは「カーボンニュートラルを念頭に置いた経済への移行」という新たな要素が加わるGRWの再編計画が、対象地域の脱炭素化事業の拡大を促すものとなった。ドイツと日本は、上述のように共通の姿勢を示していることが示された。これら両国における脱炭素化事業への投資が数年後に効果として現れることを注視していきたい。

参考資料

※1 経済気候保護省

https://www.bmwi.de/Redaktion/DE/Pressemitteilungen/2022/02/20220222-bmwk-richtet-regionale-strukturpolitik-starker-auf-aktuelle-herausforderungen-aus.html

※2 メザニンファイナンス

メザニンとは、出資(エクイティ)と融資(デット)の中間的性質をもつミドルリスク・ミドルリターンの金融手法のこと。

※3 BCJ NEWS

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脱炭素化の早期実現へ向けて、環境省が(仮称)株式会社脱炭素化支援機構を設立準備中

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