脱炭素化の早期実現へ向けて、環境省が(仮称)株式会社脱炭素化支援機構を設立準備中

(文責:河北 浩一郎)

 令和4年2月8日「地球温暖化対策の推進に関する法律」いわゆる「温対法」の一部改正案が閣議決定された。温対法は、平成10年の制定以来、幾度も改正が重ねられており、令和3年の改正において、「2050年までの脱炭素社会の実現」を基本理念とすることが、同法に明記された。

 昨年に続くこの度の改正案では、政府の脱炭素社会実現への意欲が色濃く反映されていることが伺える。環境省の報道発表では、「脱炭素化に資する事業に対する資金供給その他の支援を強化することにより、民間投資の一層の誘発を図る」としている。

 こうした背景を踏まえ環境省は「前例に乏しく投融資の判断が難しい、認知度が低く関係者の理解が得られにくい等の理由から資金調達が難しい脱炭素化に資する事業に対して、一層の民間資金の呼び込みが必要」であるとし、2021年12月24日に「株式会社脱炭素化支援機構」を創設し資金供給等を行うことを公表した。

 今は未だ構想段階である本支援機構の創設を実現させる為の実効的準備として、環境省は、脱炭素ポータル※1を通して、広く資金ニーズに関する情報を収集している。

 本支援機構による具体的な支援対象事業として、以下が想定されている。

  • 食品バイオマスの肥料・燃料化・エネルギー利用
  • 森林の整備・利用(新規植林、再造林、製材等)
  • 建設廃材等のバイオマスエネルギー利用
  • 営農型太陽光発電
  • ソーラーカーポート(駐車場用の屋根置き太陽光)
  • 物流施設・業務ビル等のオンサイト太陽光発電 住宅の屋根置きオンサイト太陽光発電 中小水力発電
  • 洋上風力発電
  • 地熱発電
  • 地中熱の利活用
  • マイクログリッド等を活用した地域エネルギーマネジメント
  • VPP事業
  • EVカーシャアリング
  • 二酸化炭素の回収及び資源化(メタネーション等)

 なお、「株式会社脱炭素化支援機構」では産業投資200億円を盛り込み、1,000億円程度の規模の脱炭素事業を実現するとともに、新たなビジネスモデルの構築を通じて、数兆円規模の脱炭素投資の誘発に貢献することを目指すことを公表している。出資、メザニン※2、債務保証等の供給方法により、金融機関や企業及び脱炭素化事業に資金提供を行う計画である。

 この公表より、㈱脱炭素化支援機構の財源は、「呼び水」としての200億円であること、つまり、これまでも民業圧迫が懸念されるとの指摘があった所謂「官民ファンド」である事が分かる。「官民ファンドの運営にかかるガイドライン※3」に示されている通り、官民ファンドは、「民業補完」に徹するべきであるが本件はどのような展開となるであろうか。現時点では、脱炭素社会実現へ向けた同機構の役割及び効果的な資金活用に期待したい。

※1脱炭素ポータル

「脱炭素化支援機構からの資金支援等に御関心のある方へ (情報提供のお願い)」

https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20211224-topic-19.html

※2 メザニン

出資(エクイティ)と融資(デット)の中間的性質をもつミドルリスク・ミドルリターンの金融手法のこと。元利金の返済順位が他の債権より低い、無担保の貸出債権である劣後ローンや、普通株式の株主に優先して、配当や残余財産の分配を受ける権利が認められる優先株式などが該当する。

※3官民ファンドの運営に係るガイドライン

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/fund_kkk/pdf/guideline.pdf