建築物木材利用促進協定により更なる木材利用と脱炭素化の促進へ

(文責:坂野 佑馬)

 2021年10月1日に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材利用の促進に関する法律」が施行された。これは、平成22年に制定された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を一部改正したもので、木造化推進の対象を公共建築物から建築物一般[1]に拡大するとした。事業者が国または地方公共団体と「建築物木材利用促進協定」を締結できるという仕組みを設けることで、国内での木材利用を支援・促進を目指すものである。

 国・地方公共団体は建築物木材利用促進協定において、川上の林業・木材産業事業者から川下の建築主や建設事業者に至る一連の関係者に対して技術的助言もしくは情報提供を行うこととしている。⺠間建築物における⽊材の利⽤が促進されるとともに、脱炭素社会・持続可能な社会の実現も目指している。以下に協定のイメージを示す。

図 協定のイメージ

出典:林野庁_改正公共建築物等木材利用促進法(脱炭素化社会の実現に資する等のための建築物等における木材利用の促進に関する法律)の概要 ~はじめようウッド・チェンジ~ ハンドブックver.2

 国と締結した協定に関しては各省庁のHP上で公表されるが、林野庁は協定締結の建築主となる事業者が国や地方公共団体による財政的な支援を受けられる可能性や、当該事業者の社会的な認知向上と環境意識の高い事業者としての社会的評価も向上すると表記[2]している。

 この協定により弊社は以下に挙げる様々な協定の取り組みがあると想定している。

・地場材の年間利用目標量を設定し、伐採跡地に植林を行うとするもの。

・都市圏と山村部の間での木材需給を確約するもの。

・木造建築の専門的な知識を有する設計士や林業従事者の育成に取り組むもの。

 政府は、様々な主体が連携していく中で、地域の特色が反映されるものを推奨するとしている。この協定制度が単に建築物の木造化を推進するだけでなく、地域や日本の環境にとって有益なものとなることを期待したい。協定の今後の動向を注目していく。

[1] 条文には「建築物一般」という記載は無いが、林野庁HPではこの表現で提示している。

[2] 林野庁_建築物木材利用協定https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/kidukai/mokuri_kyoutei/index.html